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顔のない男
2007-02-11 Sun 13:27
剛しいら 著 北畠あけ乃 イラスト  
徳間キャラ文庫 2003年7月発行

近頃、『王の男』にハマったり(笑)、既刊9巻という長めの小説を読んだり(松岡なつき著「FLESH&BLOOD」面白いですね!)、などしているうちに、更新をサボっておりましたが、久々の小説の感想です。以前から読みたいと思いつつ、中々古書店でも出会えなかったこの作品、先月続編の『見知らぬ男』(2004年3月発行)『時のない男』(2005年9月発行)をやっと見つけたので、ゲット出来なかった『顔のない男』はネット注文で買いました。
デビューして3年、まだに大きな役を演じたことのない駆出し俳優の音彦に、若手トップ映画監督である桐生から声かかった。主役の弟である重要な役柄「玲二」を演じて欲しいという願ってもない話だったが、それには条件があった。主演俳優である飛滝と、役柄同様に兄弟として同居生活をしろと言うのだ。戸惑いながらも条件を受け入れた音彦だったが、初対面の挨拶もないままいきなり兄として現れた飛滝は、弟を必要以上に溺愛するあまり、毎夜「玲二」である音彦を抱いて寝るのだが・・・。
剛しいらさんの作品は、好きなものは何度も読み直したくなるほど気に入っているんですが、何か個人的にはハズレと思う作品もあったりと、幅が広すぎてうっかり作家買い出来ないという問題があるんですが、このシリーズはとても良かったです。もっと早く読んでおけばよかったと思いました。

自分ではない人物を演じる俳優という職業に、恐いほどの完璧主義を求める飛滝は、配役が決まったその時からその人物に成り切ろうとします。前作のストーカー役では、役に成りきるあまり相手役の女優を本気で殺しそうになるという事までありました。

弟「玲二」として愛される音彦は、しだいに役柄としての兄ではなく、飛滝本人を想うようになっていくのですが、飛滝本人の素顔が分からない事に不安を感じ、それを知りたいと切実に思うようになります。そういうのは、ごく自然な感情ですよね。役に成りきる飛滝が、撮影を終えて役柄としての兄弟という関係に終止符が打たれた瞬間、音彦を忘れ去ってしまう怖れや不安もよく分かります。

あとがきで、著者の剛しいらさんも言っておられますが、人は俳優でなくても、自分の属性である何かを演じて生きている部分がありますよね。その上、こうしてネットが生活の一部となった今では、ネット上の自分と言う少し特殊な役割を演じる場合もあります。役に成りきる事で素の自分を見失っていく飛滝と、俳優飛滝を尊敬しながらも、素の飛滝を見出そうとする音彦の話は、何処か現代人の本質に迫る問題を投げかけているように思いました。

天才子役としてデビューした飛滝は、30歳にして芸暦20年以上のキャリアを持っている実力派俳優です。母子家庭に育った彼は、子どもに完璧な演技を求める母の期待に応えるべく、役に成りきる技を身に付けてきた訳なのですが、それは殆ど多重人格といっていいほど病的な感じさえします。前作で相手役の女優を殺しそうになった彼は、しばらく俳優業を休んで、ラーメン店の経営をしていました。実はその間にさえ素の飛田(飛滝の本名)に戻る事はなく、何とラーメン店の経営者という役割を完璧に演じていたのです。

いったい何時素の飛田に戻るのか、そもそも素の飛田とはどんな人物なのか、音彦だけでなく飛滝本人にも解っていないのではないかとさえ思われます。音彦がその愛情をもって、飛滝を見守り、本当の飛田を見つけられるのか、というのがシリーズ全編を通じての課題です。『顔のない男』は序章ということで、続編も緊張感が続きます。
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コメント
■はじめまして
空さんのところから遊びに来ました。
「王の男」、私も大好きです。
ブログも読ませていただきました。
なるほど~、と納得するコメントが。
私もDVDが出たら再見してみたいです

たくさん小説を読んでらっしゃるんですね。
私は最近BLに復活したので、あまり知らないんです。
(たけうちりうとさん、秋月こおさんを最近読んで、はまりつつあります)
こちらをぜひ参考にさせていただきますね。

そして杉本亜未さんの名前があって、すごく嬉しいです。
以前から大好きな作家さんなので。
また読み返してみたくなりました。
2007-02-12 01:32 | URL | モモ太 #Xlf.8pIU | [内容変更]
■モモ太さん、はじめまして。

コメントありがとうございます!
杉本亜未さんの「ANIMAL X」は簡単にBLという括りに入れてしまっていいのかな、と思う作品ですね。「独裁者グラナダ」読みそびれているので、読みたいです。
小説は、ほんとにBL系しか読まないんですが、たけうちさんや秋月さんも好きです(^-^)
「王の男」ご覧になったんですか。DVD出るの4月ですが、楽しみです
2007-02-12 11:34 | URL | ヒトコ #hHr8eLEw | [内容変更]
すごい偶然で、実はわたしも先日、「顔のない男」を読みました。
わたしも、「もっと早く読んでおけばよかった~!」と思ったクチです。

音彦がどんどん飛滝に曳かれていくのと同時に、飛滝のミステリアスさが、印象的ですよね。

思わず続編2冊を買ってしまいました……またそのうち、レビューをアップしようかと思ってますが、ヒトコさんのレビューも、楽しみにしております。
2007-02-14 22:45 | URL | lucinda #- | [内容変更]
やっぱりlucindaさんもお読みになっていたんですね!
blogで紹介されていた購入本のお写真、一番上に写っていたのが「顔のない男」でしたので、ちょうど同じ時期に読まれるのね、と嬉しく思っていました。ほんとうに、発売当時躊躇せずに買っておけばよかった、と思いました。 lucindaさんのレビューも楽しみにしています!

『見知らぬ男』は続けて一気に読んだのですが、『時のない男』は仕事の行き帰りの読んでいるので、まだ読み終わってません(^^;)
2007-02-16 00:12 | URL | ヒトコ #hHr8eLEw | [内容変更]
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