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王の男
2007-01-14 Sun 09:07
イ・ジュンイク監督作品 2005年韓国
日本公開は2006年12月9日より、配給角川ヘラルド映画

先日映画館のレディースデイを利用して『王の男』を観てきました。公開以来気になりつつも、「そのうちDVDが出たらレンタルすればいいや」くらいの気でいたんですが、そろそろ上映終わちゃうのかなと思ったら急に観たくなりました。それも、「女より美しい」という女形をこの目で確認しなくちゃ、という好奇心によるもので、あまり作品自体に期待はしてませんでした。

でも観始めたらまず主役の二人の息の合った芸に感心し、互いを必要としあう気持ちに共感し、王の異常さにハラハラし、物語に惹き込まれて行きました。出演者の皆さん熱演でしたよ。ラストは泣けちゃいました。両隣の席の方もほぼ同じタイミングで泣いてたみたいです。いやー観に行って良かったです。思わず、めったに買わないパンプレットを買っちゃいました。まあ、いつ頃の時代が舞台なのか良くわからなかった、という理由もあるんですが(^^;)

物語は16世紀初頭の朝鮮李朝、第10代王燕山君(ヨンサングン)の時代。幼馴染の芸人チャンセンとコンギルは、女形のコンギルに体を売る事も強要する旅芸人の一座を抜出し、「国一番の芸人になろう」と都に向った。そこで知合った芸人ユッカプら3人と組んで、都で噂になっていた王と芸妓上がりの寵姫ノクスを風刺する芝居で人気を博した。だが王を侮辱した罪で役人に捕らえられた彼らは、王の前でその芝居をし、もし王が笑わなければ死罪になるという事に・・・。

恐る恐る臨んだ舞台で、チャンセンの胆の据わった演技とコンギルの機転の利いたアドリブで王を笑わせ、彼らは宮殿に住まう「王の芸人」となった。自分たちの芸が王に認められたことを喜ぶ5人だったが、王はコンギルを気に入り彼一人だけを度々私室に呼寄せるようになった。そして彼らは、思わぬ悲劇に巻き込まれていく・・・。

実在の王燕山君と、彼が芸妓や芸人を宮殿に招いて遊興にふけった暴君であったという史実をもとに、架空の人物である芸人たちを主人公にした、歴史物フィクションです。原作は、2000年の初演以来数々の演劇賞を受賞している『爾』という舞台劇で、「爾」とは王が寵愛するものを呼ぶ時の呼び名だそうです。映画版の原題はハングルが読めないので解らないんですが、英題は"KING AND THE CLOWN"なので、直訳すると「王と道化(芸人?)」ということになるのでしょうか。邦題は、多少の誤解を招くような気もしますが、中々意味深で良かったのではないでしょうか・・・。

原作の舞台ではコンギルの方が主役で、彼は王の寵を得たことで権勢欲におぼれそうになる人物らしいです。そしてそこでは側にいるだけの人物だったらしいチャンセンが、映画では芸人としての野心と誇りを持ち、権力に屈しない魅力的な主人公として描かれています。映画では自らの野心など全く持たない純真無垢な少年ともいえるコンギルは、チャンセンの行く道が己の進む道だと思っていた節があります。映画の公式サイトTOP頁、右手前に映っているのが主演のカム・ウソンさん演じるチャンセンで、左がイ・ジュンギさん演じるコンギルです。コンギル、確かに美しいですが、あの流し目、何となく人を見下してるような冷さも感じます。だから実際に映画を観るまでは、最終的に寵を逆手にとって王を愚弄する嫌な奴なのかと思ってたんですが、映画のコンギルからは全くそういう印象は受けませんでした。それどころか、王に同情し純粋な気持ちから「王の芸人」であろうとするコンギル。でもその実利的野心を現さない姿に、どうしょうもない遣る瀬無さを感じました。

普段は無口でおとなしく、自分の意思もあまり表明しない無欲な青年に見えるコンギル。でもひとたび女形の芝居を始めると、色仕掛けで身分の高い男を手玉に取るハスッパな美女を堂々と演じ、下ネタ炸裂の大胆な演技で笑いを取ります。下世話で自信満々な男を演じるチャンセンとの丁々発止の遣り取りも見事で、二人で息の合った曲芸を披露する芸達者な人です。舞台では、チャンセンに負けず劣らず胆の据わった芸人であり、お客に合わせ機転を利かせた演技が出来る物凄く頭の回転が良い人で、単に見てくれが美しいだけの女形ではありません。

でも、だからこそ、これだけ才ある芸人ならもっと野心を抱いても不思議じゃないのに、舞台以外でのコンギルは常に控えめで無口だし、自分から何かを望む事もなく、チャンセンの快活な笑顔に寄添う従の人です。野心が無い分自らは道を選ぼうとせず、ある意味流されているだけとも言えます。旅芸人の一座にいた時、芸だけでなく体も売らなくてはいけない事を、どんなに嫌でも仕方ないと諦めていました。チャンセンのように自分から抗って逃げようとはしないんです。でも何よりチャンセンを傷付けたくないと思っているので、その為なら咄嗟に凶器を手にするなど無意識に大胆な行動にでたりもします。終盤で人形劇に託してコンギルが語っていますが、かつて盗みを働いてしまった時も、チャンセンに庇われて二人で逃亡していたんですね。窃盗犯で売春もしてて殺人を犯したかもしれない、よく考えたらとんでもない経歴の持ち主ですが、当時都に流れ着いた下層階級の人たちの中には、少なからずそういう人もいたんでしょうね。

そんなコンギル、人の気持ちを察する優しさと洞察力を持ち、あんなに機転も利く人なのに、チャンセンへの受け答えを聞いていると「ひょっとして頭足りないの?」とさえ思える場面もあったりします。ただチャンセンはそういう子どもみたいなコンギルを、兄のような気持ちで可愛いと思っている様子。罪深くて子どもの様に純真無垢な人・・・。

燕山君がコンギルを気に入ったのも、美しい容姿だけではなく、彼の子どもの様な無垢さだったのではないでしょうか。彼らの芸を気に入った王ですが、チャンセンの挑戦的な態度には本能的に警戒心を持ったはずです。一緒に風刺劇をやっていても、コンギルにはそういう挑戦的な気持ちはありません。美しい容姿や王の気を逸らさない気遣いだけなら寵姫のノクスだって持ち合わせています。けれど、純粋に孤独な王を慰めたい思いから芸を見せようとするコンギルのように、媚もへつらいも野心も無く、まるで子ども同士が触れ合うように王の心に応えようとすることは無かったのでしょう。

しかしコンギルは、あの王の専属芸人として寵を得る事の意味をわかってはいませんでした。ノクスは野心と権勢欲から王の寵を得る努力をしただろう人ですが、低い身分の芸妓から成り上がった寵姫としての矜持と覚悟を持っている女性です。王の寵愛を笠に着た鼻持ちならない女で、嫉妬からコンギルを陥れようともしますが、大臣達のクーデターにも動じず、命がけで王を愛する格好良い女でもあります。

一方コンギルは、王に同情してはいても運命を共にするだけの覚悟など持ち合わせてはいません。彼はあくまで、自分たちの芸が王を慰め癒すのではないかと思っただけです。彼が運命を共にしたいと思うのは、いつだって相方のチャンセンだけでした。コンギルの心までは手に入らないと知った王は、自分が精神的に追い詰めて気絶させたコンギルの体に、駄々をこねる子どもの様に頭を打ちつけ、思い余って唇を塞ぎます。このシーン、性的な意味合いはあまり感じませんでした。愛する事を知らず、愛される事だけを望む幼い子どもの様な可哀想な王と、チャンセンに守られ、信頼しあう事も甘える事も知っている幸せな子どもであるコンギル。自分たちの芸で王を癒せるかもしれないと考えたのは、ある意味コンギルの思い上がりだったのかもしれません。

コンギルは純粋無垢だったのかもしれませんが、そんな彼の思いや行動が周りを悲劇に巻き込んで行ったのだとも言えるのがこの物語です。もちろん根本的には燕山君の狂気が元凶です。コンギル自身には全く悪意がないだけに、権力と狂気に触れてしまった人々の悲劇を、何とも言えない思いで見つめました。映画の前半はチャンセンの格好良さに心惹かれ、後半に行くに従って美しいコンギルがまとう遣る瀬無さが胸に迫りました。だからこそ、全てを覚悟したノクスと自失した王の前で、最後の芸を披露する二人に涙を抑えられませんでした。彼らは絶対に互いを必要とする相棒同士だったと同時に、結局最後までそれぞれの思いで「王の芸人」でもあったんですね。

それにしてもコンギルを演じたイ・ジュンギさんお綺麗でした。ちょっと虜になっちゃいそうでしたが、記者会見での洋服姿の写真を拝見したら、もちろん美形ですが笑顔の可愛らしい青年で、メークや髪型のせいもあるんでしょうが、コンギルより若い感じがしました。私はイ・ジュンギさんというより、彼の演じたコンギルの虜になったようです。イ・ジュンギさん美しいけれど決して華奢な方ではないです。背丈もチャンセン役のカム・ウソンさんより高いように見えました。芝居以外の場面では、少年のように元気な足取りでチャンセンの後を歩いているシーンもあって、それはそれでほのぼのとして良かったです。若いからこそ出来た役でしょうが、お若いのに難しい役をよく演じられたなぁ、と感心しちゃいました。

そして主演のカム・ウソンさんのチャンセン、とっても格好良かったです。王の前でも物怖じせず高らかに台詞を話す声、綱渡りの演技、コンギルを庇う男気、素敵でした。燕山君役のチョン・ジニョンさんも演技派でした。黙っているだけで、狂ってるよこの人、というのが伝わってくる表情、私室で芸人の芝居を真似る時の異常さ、とっても怖かったです。小心者だけど人の良い芸人仲間のユッカプを演じたユ・ヘジンさんも良い味出してました。
何だか日本の時代劇を思わせるテーマ曲にも心動かされました。

韓国では4人に1人が見たということで、興行収入の記録を作る人気映画だったそうですが、日本公開ではさほどの興行収益も上がってないとか・・・。とっても心に残る作品だったのに、日本人受けしなかったんでしょうか? 私がこんな長々感想を書くほど入れ込んで観てしまったのは、一般人と見る視点が違ったからなのか、とちょっと不安に(笑)
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コメント
■はじめまして
ヒトコ様はじめまして美緒と申します。

『王の男』私も見ました。涙しました。
ラストの台詞…あれは泣けて泣けてダメです。
チァンセンとコンギルの二人の絆というか愛というか…深いですね。また孤独な王の気持ちも痛いほどわかり、癒すコンギルの気持ちもこれまた良くわかるから、辛かったです。
私もコンギル役のイ・ジュンギくんは色っぽくて、虜になりました。
撮影時には足を縫うほどの怪我もされたそうです。最近過去に出演された『ホテルウ゛ィーナス』も見ましたが、別人の様でした。華奢な感じがします。
やっぱりコンギルがハマり役ですね。

ヒトコさんの感想読んでいたらまた見たくなりました(笑)。

現代ものもいいですが、時代もの歴史ものは本当にいいです。(今は大河ドラマにハマりつつ…(笑))

これからもどうぞよろしくお願いします。
2007-01-14 09:40 | URL | 美緒 #hHr8eLEw | [内容変更]
■激しく共感!
『王の男』すごかったですよね。
ヒトコさんの感想を読んで、激しく共感してしまいました。

>燕山君がコンギルを気に入ったのも、美しい容姿だけではなく、彼の子どもの様な無垢さだった

ですよね。
私もそれを感じました。
全体的に、性的な妖しい愛というよりも、もちょっと大きな愛が描かれていた感じですよね。
韓国映画はあまり見ないんですが、俳優さんたちの演技には圧倒されてしまいました。

ちなみに時代背景は、「チャングム」と同じ時代だそうです。
「チャングム」と「王の男」では、王の描かれ方が全く違うとか。
2007-01-14 09:43 | URL | 霜月うまれ #hHr8eLEw | [内容変更]
■コメントありがとうございます!
>美穂さん
はじめまして!
あのラストの台詞、今思い出しても泣けそうです。
二人の絆の深さ、最後まで王に同情を寄せるコンギルの気持ち、最後まで反骨の芸人であろうとするチャンセンの心意気、悲しい結末ですが、精一杯芸人として生き抜いた二人に拍手です。

あのお二人、綱渡りもスタント無しで演じてるところが多いときいて驚きました。足を縫うほどの怪我をされたとは知りませんでしたが、ご本人たちの役者魂が、そのまま役柄二人の芸人魂に直結しているようですね。凄いです。
『ホテルヴィーナス』も観てみたいと思っているんですが、別人でしたか。華奢な感じなのは、まだ一段とお若かったからでしょうか。コンギルは本当に良かったです。

大河ドラマ、「蝉時雨」で注目の内野さんが主演なので、私も楽しみにしています(^-^)
こちらこそ、今後ともよろしくお願いします。

>霜月うまれさん
『王の男』よかったですよね。 共感していただけて嬉しいです!
日本では韓国ほど人気が無いようなんですが、どうしてでしょう・・・。

私も韓流モノはドラマもほとんど見てなく、映画は今回が初めてでした。俳優さんも全くわからなかったんですが、皆さん良く演じてらっしゃいましたよね。どなたの他の作品も知らないので、何の先入観もなく見られたのが逆によかったように思います。

燕山君もたぶん今まで色んな俳優さんが演じたんでしょうが、歴史上の燕山君も知らなかったので、チョン・ジニョンさんの燕山君でイメージ出来ちゃいました。王様の孤立してく様子とか可哀想さとか狂気とか、よく伝わって来ました。

時代物なのに予備知識0で観に行ってしまったんですが、「チャングム」のお父さんて燕山君に殺されてたんだそうですね。「チャングム」じたい暮れに最終回あたりを初めて見たので、あのクデータの後王に擁立された燕山君の異母弟が、チャングムが使えていた王様だとうのを、プログラムで読んで初めて知りました。でも女官たちの服装が「チャングム」と同じだったので、高句麗とか百済とかまで古い話じゃない事だけはわかりました(^^;)

*こちらの都合で、この記事自体を再UPしましたので、いただいたコメントも実際に書いて下さった時間とUPの日時が違っております。申し訳ありません。
2007-01-14 15:32 | URL | ヒトコ #hHr8eLEw | [内容変更]
ああ、ものすごく深い洞察が……さすがヒトコさん。

わたしも「王の男」は、見てよかったなぁと思える映画です。いかにも韓流という雰囲気じゃないところも、よかったと思うのですが、そのあたりが、興行成績に影響しているのでしょうか。

>一方コンギルは、王に同情してはいても運命を共にするだけの覚悟など持ち合わせてはいません。彼はあくまで、自分たちの芸が王を慰め癒すのではないかと思っただけです。

たしかに!と深くうなずいてしまいました…。ヒトコさんがおっしゃるとおり、コンギルは子どものような無垢さを持つゆえに、王を惹きつけたのかもしれませんね。
2007-01-17 01:36 | URL | lucinda #- | [内容変更]
■映画よかったですよね!
lucindaさん、コメントありがとうございます。

映画館に入る時は、「とりあえず話の種に観ておこう」くらいの軽い気持ちだったんですが、終わったら即パンフレット買いに走りました(笑) パンフレット買うの何年ぶりだったでしょう。帰り道に寄った書店でコミックまで買いましたし。我ながら、10日程前まで「そのうちDVDレンタル観ればいいや」と思っていた人間と思えません・・・。

劇場での観客の反応も良さそうだと思ったのに、日本では興行収益が上がってなかったと知って淋しかったです。韓流とかは別にしてもよかったと思ったんですが・・・。そういえば、私が観た劇場は朝一番(9時台)の上映のみで、その後は夜まで『犬神家』やってました。12月中はどうだったのでしょうね。

観る前に偶然新聞で読んだ感想に、王がコンギルに母性を求めていたらしいことが書いてあったので、年下の男の子に母性を求めるってどうゆうんだろう? とそれも興味深々で観ていたんです。でも解らなかった・・・。芝居を観てコンギルに「母上!」と駆け寄る場面はありましたが、別に素のコンギルに母の幻影を見てるとは思えませんでした。最初の「遊ぼう」からして、お友達みーつけた!、みたいに見えたました(^^;)
2007-01-17 15:17 | URL | ヒトコ #hHr8eLEw | [内容変更]
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