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きみがいなけりゃ息もできない
2006-12-20 Wed 02:27
榎田尤利 著 / イラスト 円陣闇丸
リブレ出版ビーボーイノベルズ 2006年11月発行

表題作は、2003年9月にビブロス時代のビーボーイノベルズで発行された書下ろし作品です。今回の新装版は、小説ビーボーイ2005年9月号掲載の「きみがいたんじゃ転居できない」も合わせて収録されています。そのせいなのか、お値段が税込み1050円と少々高めでした。新刊情報で値段を知っていたはずなのに、書店でレジに行くまですっかり忘れていて、千円札を握り締めて「これだけじゃ買えない」と慌てました(笑)

この作品は、同じビーボーイノベルズから今年8月に発行された『ごめんなさいと言ってみろ』、10月に発行された 『愛なら売るほど』に先駆けて書かれた、漫画家シリーズの第一作だそうです。『ごめんなさいと言ってみろ』を読んだ時、カバーに書かれている紹介に「マンガ家シリーズ、最新作登場」とあったので、「前作があるの?」と疑問に思っていたんです。この『きみがいなけりゃ・・・』が新装復刊されて納得しました。
「きみがいなけりゃ息もできない」
マニアックな根強いファンは居るらしいが、一般的には売れない少女マンガ家「豪徳寺薫子先生」こと通称ルコちゃんは、本名を二木了という生活能力皆無の青年だった。二木を放っておけない幼なじみの東海林達彦は、美大で再会してアパートの隣の部屋に住むようになってから8年、ずっと彼の生活全般の面倒をみてきた。
そんなある日、二木に大手出版社から新創刊される漫画誌の仕事が舞い込んだ。二木にとってはマンガ家としてステップアップするチャンスだったが、二木の仕事振りをあまり知らない新人編集者は、今まで使ったことがなかったアシスタントを付けて来た。それが、8年当たり前の様に続いてきた二木と東海林の関係に波紋を投げかける事になる・・・。

「きみがいたんじゃ転居できない」
美大のキャンパスで再会し、東海林が二木の隣の部屋に住むに至った、8年前のふたりのお話。
まず表紙の絵を見てビックリです。ルコちゃん、髪ボサボサなのに、女の子みたいな髪留めしてとってもラブリーな表情をしてます。しかも東海林に足の爪などを切ってもらってる様子。パートナーにそんな事してもらうなんて、臨月の妊婦さんか、何か怪我したとか障害がある場合、あとは介護入った超熟年カップルくらいなもんですよ普通。ちなみに私は臨月の時だって、ダンナに足の爪切ってもらったりしてません。ってそれは、ルコちゃんに対するやっかみかも(笑)

榎田作品に登場する生活能力のない主人公といえば、誰もが魚住くんを思い出しますよね。ペットの死にどう対処してよいのか判らず死骸を自宅に放置していたり、部屋にこもりきりで栄養失調になったりとひどいものでしたが、必要以上に散らかさないだけ魚住くんはまだマシです。ルコちゃんは散らかし過ぎです! 「のだめ」ちゃんといい勝負? 双方お風呂入ってないし、ハエ湧いてるし。微妙な関係の隣人が、綺麗好きで料理上手な所もちょっと似てます。でも漫画で描かれるとコミカルなのに、文章で説明されるとコミカルなだけではなくて惨状がよりリアルに伝わってきます。しかも、8年前からその有様は改善されずに続いていたんです。我家も幾分ゴミ屋敷化してるので、あまり強くルコちゃんを非難出来る立場にはないんですが、自分が掃除嫌いなだけに、いくら何でもあれに8年も付合ってはいられません。それは相手がどんな美青年だろうと憎めない性格だろうと、ダメだと思います。

でも東海林は面倒を見続けちゃってたんですよね。自分でも多少の自覚はあったようですが、かなり危ない領域に入っていたと思われます。それでもアシくんの登場で、自分のそんな行動が二木の自立を阻んでいるのではないか、と思ったあたりは、一般的に考えたら至極真っ当な道への軌道修正にみえました。しかし、ルコちゃんは更に危ない領域に達していたんですね。「おまえがいなけりゃ生きていけない」、自分をどう扱ってくれてもいいからそばに居て欲しいとと東海林にすがってしまう。BLなので、これも恋心なんでしょうが、何だかもっと超越した執着というか依存ですよね。JUNE的展開だと二人とも破滅しても不思議じゃないです。

でも二人は破滅なんてしません。ルコちゃんは東海林が自分から放れずに居てくれると信じてから、外では次第に大人らしい行動がとれるようになって行きます。東海林も開き直ったというか覚悟したというか、二木と共に歩む自分を前向きに受け入れているようです。ちょっと考えたら恐ろしい共依存だと思うんですが、それでもハッピーエンドなBLに乾杯!
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