スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ↑top
八月の略奪者(ラプトル)
2006-11-15 Wed 00:05
いつき朔夜 著 /イラスト 藤崎一也
新書館 ディアプラス文庫 2006年11月発行

いくつかの書評blogさんの感想を拝見して読んでみたのが、著者の前作『コンティニュー?』(ディアプラス文庫) でした。初めて読む作家さんだったのですが、主人公達の馴初めがBL的にはありがちだけど非現実的なものなのに、仕事についてや職場の人間達は中々リアルに描かれていて、面白く読みごたえがありました。次回作を楽しみにしていたのに、うっかりチェックもれしていて、これまた書評blogさんでこの本が発売になっているのを知りました。

雑誌に掲載された表題作の他、3年後のふたりを描いた書下ろしを所収しています。
「八月の略奪者(ラプトル) 」小説DEAR+ 2005年夏号掲載
高校3年の椋本浩紀は、校外見学で訪れた博物館で、体験学習に使ったアンモナイトの化石を割ってしまう。適当に謝って済まそうとした浩紀を、手を上げてまで本気で叱りつけたのは、おとなしそうに見えた学芸員の香月草一だった。「弁償」の代りに夏休み中ボランティアとして博物館で働く事になった浩紀は、指導者でもある草一にしだいに惹かれていく。人を愛することに臆病になっている草一に、自分の気持ちをきちんと伝えようとする浩紀だったが・・・。

「十二月の暴君(ティラン)」書下ろし
交際3年目、互いに忙しく会える時間は少ないが、ふたりの仲は上手くいっていた。今の幸せを無上のものと感じながらも、就職活動に臨む大学生の浩紀が、やがて普通に家庭を持つ生活を送れるようにと、別れを考え始める草一・・・。
博物館での仕事を通して、しだいに縮まっていくふたりの距離。そして、草一にとって初恋の相手でもあり、今は親友でもある木部の存在。社会人ボランティアとして博物館にやって来る彼と関わることによって、浩紀はいっそう草一への想いを確信していきます。それぞれに草一を思いやる木部と浩紀の接し方や考え方の違いからも、若々しく勇気をもって進む浩紀の真直ぐさが際立ってみえます。それに引きかえ、健気な雰囲気をたたえながら、中々臆病さから抜けられない草一。そういう所が、読者の私にとってはちょっとイライラもするけれど、年下攻めの浩紀くんにとっては、庇護欲をそそるというか可愛い所でもあるようです。

そして今回はまた博物館の学芸員という一般的ではない職業ですが、書下ろしでは環境問題や行政側との対立まで描いていて、実際に起こり得るような具体性がありました。恋愛シチュエーションだけから見ると、わりとありがちな気もしますが、仕事の問題とふたりの関係の変化を上手くからめていて、小説として面白く読ませてもらいました。細かく書き込まれている仕事関係のエピソードや会話も、ちゃんと生かされています。

個人的に身近に感じたのは、書下ろしの環境問題の舞台として登場する「屏風谷」という場所の存在です。旧日本軍の弾薬庫跡で戦後米軍に接収され、数年前に自治体に返還された場所という設定なのですが、同じような旧日本軍の弾薬庫跡が我が地元にもあるんです。こちらは自治体への返還など話にも出ていなくて、期間限定で地元市民に開放される場所に入るのも事前の名簿提出と写真入の身分証明書(パスポートや免許など)提示が必要です。でもその場所は、ニュータウンとして宅地開発された場所に隣接しながら、明治大正以前からの自然が残されています。この作品のなかでも語られているように、米軍に接収されていなければ戦後間もなく宅地開発さていただろうと思います。著者はもしや地元の方かしら?、などと思ってしまいましたが、福岡のご出身なんですね。日本各地にそんな場所が点在していんだなぁと、BLを読みながら米軍基地問題も考えたりしました。

ところで、『コンティニュー?』を読んだ時には見つけられなかったデビュー作品『G1トライアングル』も、書店にあったので一緒に買ってきました。競走馬の騎手と馬主が主人公のお話です。これも中々楽しみです。

「ゲイ&腐男子のBL読書ブログ」さん
「月と凌霄花」さん
へTBさせていただきました。
スポンサーサイト
別窓 | いつき朔夜 | コメント(8) | トラックバック(3) | ↑top
<<INTENSITY | ホーム | BL系、今年のベスト作品は?>>
コメント
こんばんは、今日書いた「古都の紅」とあわせてTBさせていただきました。
学芸員の仕事というと、どうしても自分から見た
「博物館にいる人」という印象だけしかなかったのですが、
研究者でもあるということにこの作品で気づきましたw
学芸員がちょっとかっこよく見えてきた今日この頃です。

それではまたお邪魔します~。
2006-11-16 23:51 | URL | aya-me #xlO/wHwY | [内容変更]
aya-meさん、TB&コメントありがとうございます。
博物館とか美術館の学芸員さんって、所蔵品に関する調査研究がお仕事なのかと思ったら、生態学が専門でフィールドワークもする研究者もいるとは、私も考えた事がありませんでした。競走馬の世界、ゲーム業界、学芸員と来て、いつきさん次はどんなマニアックな業界を舞台にして下さるのかと、またまた次回作が楽しみです。
2006-11-17 22:30 | URL | ヒトコ #- | [内容変更]
■初めまして。
最近BLに戻ってきて、去年の冬雑誌でこの作家さんの作品に萌えて、情報を集めてみたらまだ新しい人だったんでびっくりしました。
ちなみに私が萌えた作品は、パチンコ屋が舞台で、九州弁でタンカをきる釘師が攻めでした。
この「略奪者」と同じ作者さんとは思えないくらいアダルトで男くさい作品だったので、作風の違いにびっくりしましたが、これもやっぱり大好きになりました。
次にどんなものを書くのか、とても楽しみです。
2006-11-19 16:48 | URL | じーら #hHr8eLEw | [内容変更]
■じーらさん初めまして。
いつきさんは、文庫版『コンティニュー?』で初めて読んだ作家さんでしたが、それがデビュー2冊目の本と知って、私もびっくりしました。そんな新人さんとは思えませんでしたよね。
『略奪者』は「小説DEAR+」2005年夏号掲載だそうなので、じーらさんが読まれたのはその後に書かれた作品ですね。ということは、次回文庫化されるのは、そのパチンコ屋が舞台のお話かもしれませんね。それにしても今度は「釘師」ですか、またマニアックな! じーらさんもお薦めのようなので今から楽しみです。
2006-11-19 16:51 | URL | ヒトコ #hHr8eLEw | [内容変更]
ヒトコさん、こんばんは。
TBありがとうございました。

いつきさんは1作品ごとに作風が少しずつ違っているので面白いです。
じーらさんが言われた釘師の話は私も知りませんでしたが、またマニアックな世界のようで、楽しみですね。

博物館の人たちが、こんなふうに研究したりしていることは知らなかったのでとても興味深かったです。
BLって、時々すごく勉強になりますよね~。
2006-11-19 20:03 | URL | 秋月 #3VVjZltY | [内容変更]
秋月さん、こちらこそTBありがとうございました。
この作品の後に『G1トライアングル』も読みましたが、BLでわざわざマニアックな職業を、それも詳しくお書きなって、ラブとかエロとか少なめでも楽しめてしまうのは、何なのでしょうか(笑) 次回作も、ラブより釘師をどうか描いているのかが気になってしかたありません。
三浦しをんさんが『シュミじゃないんだ』というBLにつてのエッセイの中で、「ボーイズラブというジャンルは、一種の職業漫画・職業小説でもあるな」と書かれてましたが、本当にそうですね。烏城あきらさんの「許可証シリーズ」で化学プラントについて知りましたし、春原いずみさんの病院モノで研修医の過酷な労働実態も知りました。
ほんとうに、BLって、時々すごく勉強になりますよね~。
2006-11-21 01:27 | URL | ヒトコ #hHr8eLEw | [内容変更]
こんにちは、はじめまして!tatsukiと申します。
実は先週あたりからヒトコさんのブログを、
舐めるように何度も読ませて頂いております。
この作品のレビューもさることながら、
BL周辺にまつわる記事や研究に対するコメントも、大変興味深く読ませて頂きました。
(知らないことだらけで、自分の不勉強が身に沁みましたよ…)

私の記事は幾分前のモノなのですが、
共通の話題を扱っているのも何かの縁かと思いましたので、
あとでTBも送らせて頂きますね。
(拙い感想なので大変申し訳ないのですが…)

私もこの作品を通して初めて学芸員のお仕事を知りましたし、
米軍基地の接収問題も初めて具体的なモノとして実感できるようになりました。
この作品を通してBLの奥深さに改めて純粋に感動しましたね。

ちなみに「釘師」のお話も大変マニアックで面白いですよ♪
ただあの作品、BL的見地から言えば未完成だったような…。
私も早く文庫で読みたいです。
では。
2006-11-24 11:54 | URL | tatsuki #tFQqb7FM | [内容変更]
tatsukiさん、はじめまして。
コメント&TB、ありがとうございます。
このようなブログを何度も読んで下さったなんて恐縮です。
実は私も少し前からtatsukiさんのブログを拝見しておりました。
BL作品の感想だけでなく、BLというジャンルについての考察など
とても興味深く読ませていだだいております。

いつきさんの作品は、物語の舞台となる職場と業務に関わる人間関係が上手く描かれていて、毎回それを楽しみに読んでいるのですが、「釘師」にも期待してしまいます。tatsukiさんも既に雑誌で読まれたんですね。BL的には多少未完成でも、仕事に関わってふたりがどうなって行くのかが楽しみです。

こちらからもTBさせていただきました。
2006-11-25 03:58 | URL | ヒトコ #hHr8eLEw | [内容変更]
↑top
コメントの投稿














管理者だけに閲覧

↑top
トラックバック
この記事のトラックバックURL

FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
『八月の略奪者』/いつき朔夜(藤原一也)
『八月の略奪者』/いつき朔夜(藤原一也)
八月の略奪者と書いて「はちがつのらぷとる」と読みます。難しいタイトルの読み方ですね。地名・人名に続いて難しいのが本のタイトルだと思います。たとえば、こんな本のタイトル。樒/榁→しきみ/むろ亜智一郎の恐慌→あともいちろうのきょうこう一発で読めた人を尊敬します
ゲイ&腐男子のBL読書ブログ 2006/11/16 23:44
『八月の略奪者』
『八月の略奪者』
「八月の略奪者(ラプトル)」  いつき朔夜/藤崎一也 新書館ディアプラス文庫 (2006.11)【あらすじ】高校三年生の椋本浩紀は、校外見学で訪れた博物館でアンモナイトの化石を割ってしまう。適当に謝って済ませようとした浩紀を、学芸員の香月草一は本気で叱りつけて
月と凌霄花 2006/11/19 20:16
8月の略奪者
8月の略奪者
久々に魂ごと持っていかれました…。待望のいつき朔夜さんの最新作、正にタイトル通りの略奪者でした。目下の所、私はこの小説の所為で心ココにあらずという状況でして、冷静な記事を書けない予感が致します。自分
la aqua vita 2006/11/24 11:58
↑top
| グラス・エイジ |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。