スポンサーサイト
-------- -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ↑top
月と茉莉花 ~月に歩す~
2006-11-09 Thu 01:17
佐倉朱里 著 / イラスト 雪舟薫
幻冬舎コミックス リンクスロマンス 2006年10月発行

書店で見かけて「中国風歴史物」な所に心惹かれたのですが、前作を全く知らない続き物だしなぁ~、と躊躇していました。でもつい先日、いつも楽しみにおじゃましている、アキミさんの「ボーイズラブを読む!」でこの本のレビューを読ませていただき、「やっぱりとっても面白そう!」と我慢できなくなって、とりあえず今書店で買えるこの3作目だけゲットしてきました。

前2作は、下記の通り随分前に発行されています。
『月と茉莉花』 (2003年6月発行)
『月と茉莉花 ~羞花閉月~』(2004年1月発行)
前作までのあらすじ(幻冬舎コミックスHPを参考にしました)
戦で敵の湘国を滅ぼした琰国の太子煬大牙は、湘国の目の見えない第一公子(月心)を捕虜にする。自分を廃嫡・幽閉までした亡国を恨むことなく運命を受け入れようとする公子に対し、大牙は特別な感情を抱きはじめる。
大牙は、愛する月心の元服を行おうとするが、突然拒まれてしまう。理由がわからず月心を責めたことから行き違いが生じてしまった2人の関係は…。
前作までの内容はレビューで読ませていただいたので、完結編となる3作目から読み始めても、概ねその展開はわかりました。そして、3作目だけでも充分面白く読めましたし、結末も「なるほど、それもアリですね」と納得できて、余韻の残る物語でした。私の中で物語は完結したんですが、やっぱりふたりの馴れ初めなども詳しく知りたいと思い、書店で見つからなかった2冊はネットで注文中です。数日のうちに入手できると思うので、楽しみにしています。

さて本題の「~月に歩す~」ですが、表題作を含めた3話所収です。
「~月に歩す~」
大牙の計らいで元服した月心は、伶人として朝廷に仕えることになった。典楽庁で他の伶人に湘の楽曲を教えることがその役目だったが、滅ぼした敵国の楽曲を教わることに不満を持つ伶人もおり、その人物から嫌がらせを受けることも度々だった。月心はそれについて何も語ることはなかったが、大牙はしだいに気落ちしていく月心の様子を憂慮していた・・・。

「~月に乗ず~」
大牙は、楽師としての仕事にも慣れてきた月心を伴って、静養のために(と称して)温泉のある離宮へ赴く。穏やかなに流れる二人のひと時。ほのぼのラブラブな番外編的短編です。

「~月に酔う~」
一国の太子である大牙にとって、避けては通れない責任問題。それは妃を迎えて継嗣をもうけること。月心を愛し生涯を共にしたいと願う大牙にとって、自分の立場を踏まえてそれを実現するには、一大決心が必要だった。妃選びをめぐって大牙が下した結論とは・・・。
中国歴史物のBLといえば、江森備さんの『私説三国志』くらいしか思いつかない上に、この作品は未読です。読んだことがあるといえば、尾鮭あさみさんの「チャイナホリックファンタジー」シリーズなんですが、これは歴史物といっても西遊記がもとになってることもあり(しかも尾鮭さんだし)、だいぶ雰囲気が違います。たぶん今回が初めて読む中国歴史物BLだと思います。

なので、読んでいてふと思い浮かんだのは、酒見賢一さんの『後宮小説』でした。これまた全く違うお話なんですが、中国風の架空の王朝が舞台というところと、妃選びの話が共通点です。中国歴史物にそんなに詳しくないので、それぞれいつ頃の時代をモデルにしているのかは解りませんが、『月と茉莉花』の方が昔のような気がしました。
歴史小説というよりファンタジーとしてではあるけれど、それだけ時代を感じさせる描写がよく出来ているのだと思います。

月心と弟子にあたる伶人たちとのやり取りや、大牙の意を受けた第二公子の行動、従者たちの様子などからも、この国の王宮の雰囲気や力関係が伝わってきます。あえて難を言わせてもらうなら、王家の家族仲が良すぎること。特に男兄弟は次代をめぐって微妙な駆け引きがあるものなので、本来あまり心を許し合っていないものじゃないでしょうか。歴史小説的には、月心の家の状況の方がありそうだと思いました。

それはさておき、生まれて初めて人の中に出て行くらしい月心を、仕事に身が入らない程心配する大牙。月心を信じてない訳じゃなくて、臣下の火烏にも言われているように、子を見守る親のような気持ちなんですね。でもその心配をよそに、真摯な態度で弟子たちに接し、悩みながらも、楽師として認められていく月心。大牙の意を受けた第二公子の気遣いなどもあったものの、月心が誠意と自分の実力で道を拓いていく様子がいいな、と思いました。ラブファンタジーだけじゃなく、自己実現ファンタジー(?)もBLでは結構大きな要素ですので、私的には。

それにしても月心、故国では酷い目にあってたらしいのに、なんて真直ぐに育ったんでしょう! 無欲で純な人です。本来なら一国の太子だったのに、大牙に対して「従」であることを心得ていて、それをごく自然に受け入れている、ものすごく謙虚で誠実な人です。この月心の健気さが、この物語のツボでした。

月心に求められたい一心で、
「・・・おれが欲しいと思うことはないのか」
と問う大牙に、
「私はあなたのものです。けれど、あなたは私一人のものにはならない・・・」
と答える月心。

どんなに想い想われていても、自分と大牙の立場の違いをよくわきまえています。
そんな月心を日陰者にはせずに共に生きて行きたいと願う大牙は、その決意を父王に表明し、月心には何も告げずに引き合わせます。月心の人柄に接し、息子の願いを聞き入れる王ですが、太子である息子に対して当然譲れない条件を出します。それは跡継ぎをもうける為に妃を迎える事でした。ちょっと物分りが良すぎるような気もするお父さんですが、王としての責務は忘れていません。

そして、その妃選びにまつわる出来事では、「事が決するまで待て」と言いながら度々使いを立て贈り物を遣す大牙の態度に、寂しさを感じる月心。それが大牙の寂しさに呼応するものと理解し、また一層深く人としての情愛の機微を知ったようでした。そして大牙から重大な申し出を受けることになります。

妃選びに苦慮していた大牙も、男勝りで気立ても良く、夫婦というより同士として共に歩めそうな、陸小扇という女性を見出していました。舞台が古の中国らしき国であるので、王族たる者は現代のように一夫一婦制ではありません。彼女もそれをよく理解しています。もちろん月心も。

現代の感覚で思うと、女性と一人の男を共有することになる月心も、実質的に第二夫人に徹することになる小扇も、かわいそうな気がします。でも、王族であり太子でもあった月心は、大牙の果たすべき責任の大きさも王族の婚姻形態も熟知していたはずで、男である自分が大牙の結婚後も傍にいられるというだけで幸せだったではないでしょうか。一方の小扇も、唯一の女性の妃としてやがては太子の母にも成る訳ですから、当時(物語内の)としては幸せな妃だったのではないかと思います。

大牙には弟が二人もいるので、妃を持たず自分の代になったら弟を太子に立てる、という手に出たらいいんじゃないの、とも思いました。でもそうしたら、自分の為に実子に位を譲れない大牙に対して、月心は一生申し訳ない気持を持つのかもしれません。それを思うと、この物語が行き着いた結末が、この設定の中では最良のハッピーエンドだったのではないでしょうか。
スポンサーサイト
別窓 | 佐倉朱里 | コメント(0) | トラックバック(0) | ↑top
<<BL系、今年のベスト作品は? | ホーム | ホワイトハート新刊>>
コメント
↑top
コメントの投稿














管理者だけに閲覧

↑top
トラックバック
この記事のトラックバックURL

FC2ブログユーザー専用トラックバックURLはこちら
↑top
| グラス・エイジ |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。