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菊花の約(ちぎり)
2006-09-09 Sat 14:35
小泉八雲 著 / 平川祐弘 訳
『小泉八雲作品集3』(河出書房新社1977年8月発行)所収
私が図書館で借りたのはこの本と、『約束を守る』という題名で所収されている『十六桜 小泉八雲怪談集』(研文社1990年9月発行)ですが、他にも複数の八雲作品集に同じ話が入っていると思います。6頁程の短編です。
「秋の初めには戻るだろう」
今を去る数百年昔のある春の日、所は播磨の国(兵庫県)。赤穴宗右衛門は義弟の丈部左門にそう別れを告げた。宗右衛門は出雲(島根県)出身の武士で、故郷を訪れることになったのだった。左門が、
「出雲は遠いので、何れの日にお帰りになるか約束していただくのは難しいでしょうが、もしその日を知ることが出来れば嬉しいです。帰国を祝う用意をして門前でお迎え致します」
というと、宗右衛門は、
「私は旅慣れているので予定もたてられる。重陽の佳節の日としたらどうだろう」と提案した。
「九月九日ということですね」
左門は確認し、母とともに涙を浮かべて宗右衛門を見送った。

月日はたちまちに過ぎ秋が来た。九月九日の早朝から、左門は義兄を迎える準備を始めた。それを見た母は、
「出雲は遠いところ、予定通りに戻るとも限らないのだから、帰るのを待ってから支度をしたらどうですか」
と忠告したが、左門は聞かなかった。
「義兄上は約束を破るような武士ではありません。もし帰ってから支度を始めたりしたら、義兄上の言葉を疑っていたことになってしまいます」

しかし、昼過ぎても待つ人の姿は見えず、やがて日は暮れてしまった。
「今夜はもう休んで、明日また待てばよいでしょう」
という母を先に寝かせ、左門は一人宗右衛門を待った。けれど、夜が更けても帰っては来なかった。もしや・・・、と諦めかけたとき、遠くから軽々と足早にこちらへ向う男の姿が見えた。それは待ち人宗右衛門であった。

喜んで母を起こそうとした左門を制し、饗された酒肴にも手を付けず、宗右衛門は帰りが遅くなった理由を静かに語りはじめた・・・。
怪談集にあるお話しなので、大方察しは付くと思いますが、戻ってきた宗右衛門は生身の体ではありません。出雲を訪れた宗右衛門は、新領主尼子経久の家来になっていた従兄弟の願いで、経久に会いました。ところが、新領主に仕える気は無い事を告げると、経久は従兄弟に命じて宗右衛門を監禁させてしまいます。いくら願い出ても許されず、見張りも多くて抜け出す事も出来ぬまま、約束の日となってしまいました。

「人は一日に百里を歩く事は出来ないが、魂は日に千里を行く」
という言い伝えを思い出し、宗右衛門は左門との約束を命がけで守ったのです。残された左門は出雲に赴き、従兄弟を切って宗右衛門の敵をとった後、姿を消しました。しかし経久は、家来たちに左門を追わない様に命じた、ということです。

本当に短いお話です。宗右衛門と左門がどういう義兄弟なのか、出雲出身者が何故播磨に居るのか、という説明もありません。二人の武士の信頼関係がどうしてこんなに強かったのか、具体的なエピソードなどもまるで描かれていません。二人の年齢もわかりませんが、共に妻子がいる様子はありません。登場する近親者は、左門の母と宗右衛門の従兄弟だけです。

この物語を知ったのは、多分高校の授業でだったと思うのですが、実は作者が誰だったのかすっかり忘れておりました。でもその内容は印象に残っていました。もともとの伝承は知りませんが、上田秋成が『雨月物語』に書いているお話でもあります。木原敏江さんがそれを漫画にされてるそうなので、そちらも読んでみたいです。『雨月物語』の方には、もう少し詳しく二人の事が描かれているかもしれません。

それにしても気に掛かる宗右衛門さんと左門さんの篤すぎる信頼関係。それから、家来になってくれないからって監禁しちゃう尼子経久の仕打ち、というか宗右衛門への執着って凄くないですか。とか、高校生の頃はBL系ジャンル(当時は耽美とか少年愛?)には全く興味がありませんでしたが、今となってはしっかりBLアンテナに引っかかるお話だと思います。

今日は9月9日、この話の旧暦とちがって太陽暦のですが、重陽の節句というと『菊花の約』を思い出します。

P.S.
上を書いた後に検索してみたら、声優の石田彰さんが朗読CD「雨月物語~菊花の約~」を出されているそうです。このリンクのあらすじに、二人の出会いが書かれてました。なるほど。尼子経久は只の敵か・・・。
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