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密やかな教育 <やおい・ボーイズラブ>前史
2009-02-16 Mon 00:31
石田美紀 著
洛北出版2008年11月発行

2月2日の読売新聞「本よみうり堂」で、三浦しをんさんの書評を読み、この本を知りました。2600円と結構高価だったんですが、地元書店に置いて無かったので、下の書誌情報だけ見てネット買いしました。高かったけど、手元に置いて読みたい一冊でした。
三浦さんの書評はYOMIURI ONLINEに掲載されています。
--- もくじ ---
第一章 革命が頓挫したあとの「少女マンガ革命」
第二章 ヨーロッパ、男性身体、戦後
第三章 “文学”の場所で―栗本薫/中島梓の自己形成
第四章 「耽美」という新しい“教養”の効能―雑誌『JUNE』という場
1竹宮惠子インタヴュー…耽美は溺れるものではなく、するもの
2増山法恵インタヴュー…少女マンガにおける「少年愛」の仕掛け人
3佐川俊彦インタヴュー…文学と娯楽の間を行ったり、来たり

--- 内容紹介 ---
「やおい・ボーイズラブ」というジャンルも、その愛好者を指す「腐女子」という分類もなかった70年代……少女マンガと小説の場に出現した「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」は、旧い教養(三島由紀夫、ヘッセ、稲垣足穂、ヴィスコンティ…)をどん欲に取り入れ、エンターテインメント教養ともいうべき独自の体系へと成長していった。
本書は、この性愛表現が誕生し、80年代に充足してゆくまでの軌跡に光をあてる。「女こども」とみなされていた女性の創作者たちは、なにを糧とし、いかなる葛藤に直面し、どのように次世代へとリレーしていったのだろうか。
詳しくは洛北出版サイトをご覧ください。

石田美紀さん、この本を知るまで存じ上げませんでしたが、新潟大学准教授で映像文化論が専門だそうです。1972年生まれの石田さんにとって、「風と木の詩」をはじめとする少女マンガが、初めて接するヨーロッパであり、大人の、色気ある世界を教えてくれた、最初の作品でもありました。その時の衝撃に少なからぬ影響を受けたことが、本書執筆のきっかけになっているようです。

70年代初め、60年代に若者中心に盛上りを見せた変革への機運は、三島由紀夫の自殺やあさま山荘事件への帰結によって、終止符が打たれる形となりました。その直後、少女マンガと文学の中から「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」が生まれました。それまでの女性文化とは一線を画すこの動きには、「私にも何かできるだろうか」という問いと、「私にも何か出来るはず」という信念があったことを忘れてはいけない、と著者は書いています。

その背景として説明される古い教養、ヘルマン・ヘッセ、稲垣足穂、三島由紀夫、雑誌「血と薔薇」、ルキノ・ヴィスコンチィ…。ヨーロッパへの憧れ、男性身体が表現するものの変容、戦後という時代…。竹宮恵子の「少年愛」マンガに始まり、やがて「JUNE」という場に広がりを見せる、このジャンルの「前史」を分析しています。

第四章に、小説道場出身のJUNE作家で映画評論家でもあった、故石原郁子さんについての記述があります。
結婚後、夫の転勤のために常勤の教師職を離れた石原は、出産と育児を経験しながら、映画批評と「耽美」小説を執筆し続けた。それは、ほかの誰のためでもない、自分のためだけに行った密やかな教育であった。
そして今、私たちは、彼女の残した批評や小説のなかに、ひとりの女性が「何かできるはずだ」と筆をとった意思を読み、彼女の思考が目指すものを辿り、到達したところを知ることができる。この営みを文化と呼ばずして、何を文化と呼べばいいのだろうか。
とその最後を結んでいます。映像文化論を専門する石田さんにとって、特に石原さんの残したものには、深い思いがあったのだろうと察せられます。

本書は、かつて当事者である榊原史保美さんが書いた「やおい幻論」や、中島梓さんの「タナトスの子供たち」「小説道場・やおいゲリラ宣言」とはまた違って、より広い視野で冷静に見据えた著書です。「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」であるこのジャンルが、「JUNE」から「ボーイズラブ」へと変容した時代に、榊原さんや中島さんの、心の内を吐露するような著書が生まれました。今また何か、このジャンルの潮流が変わろうとしている様に思える時に、真摯にこのジャンルを捉え顧みようという著書が出てきたことは、意味のあることだと感じました。

P.S.
三浦さんの書評でこの本を知った、と書きましたが、昨年たいまつさんの「一日一やおい」で紹介されてたのを見てました。その時すぐに読めばよかったんですが、三浦さんの書評がなかったら、うっかり忘れてるところでした。読めて良かったです。(2/20追記)
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コメント
すごく面白そうな本ですねー! そして、三浦しをんさんの書評もですが、ヒトコさんの

>今また何か、このジャンルの潮流が変わろうとしている様に思える時に、真摯にこのジャンルを捉え顧みようという著書が出てきたことは、意味のあること

の感想も興味深いです。著者が1972年生まれ、というのも影響しているかもしれませんね。けっこう硬めな本の印象がありますが、いかがなものでしょう…?
2009-02-19 18:54 | URL | lucinda #- | [内容変更]
■lucindaさん
私も最初は、けっこう硬めな感じの本かなと思ったんですが、竹宮さんの「少年愛」作品の表現についてや、それをを描くに至った経緯から入っているので、初めて知るエピソードもあり、とっても面白く読み進みました。三浦さんも書いていらした、竹宮さん、増山さん、佐川さんへのインタビューでも、「JUNE」と「ボーイズラブ」の違いについてのお話など興味深かったです。

著者の石田さん、1972年生まれということは…。ちょうど色々考える、転機になるお年頃かもしれませんね。私がこのジャンルにハマったのも、その位の頃だったなぁ、と思ったりして。

思えばこの10年、ネットの普及もあって、このジャンルも含めオタク的なモノを幅広い世代に浸透させたように感じます。そして今では、オンラインの世界からオフラインのメディアでも話題になるようになり、既存のジャンルとして世間一般に認知された様な感じになってきました。さて次はどうなって行くのだろう…、と思ったりします。
2009-02-21 00:05 | URL | ヒトコ #hHr8eLEw | [内容変更]
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