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読売新聞に「腐女子化・・・」の書評が
2006-10-31 Tue 02:35
10月29日の読売新聞「本よみうり堂」に「腐女子化する世界」の書評が載っていました。
評者は、脳科学者の茂木健一郎さん。
従来の人間観、類型では捕らえきれない価値観や行動パターンを示す人びとが登場する度に、呼び名が自然発生的に誕生し、メディアの中で報道されることで市民権を得る。そして、私たちは新しい現実に触れた気にさせられる。
「新人類」「オタク」「やおい」「ニート」「フリーター」といった前例をあげて、今度はそれが「腐女子」なのだ、と評者は感じたようです。でも、この中で「やおい」だけは、ある特定の人びとの呼び名ではありませんよ、茂木さん。ある特定の人びとが愛好するモノ(というのか?)です。そして、その人びとが「腐女子」なんですよ~。と思わず突っ込みを入れてました(^^;)

それはともかく「メディアで報道されることで市民権を得る」というのは、その通りでしょうね。ただ、そうなると呼び名だけが独り歩きして、変な固定観念が出来てしまう危険性があります。茂木さんの言うように「現実に触れた気にさせられる」だけで、本当の現実を見ようとしない場合があると思います。「腐女子化する世界」のような本は、そこらあたりが要注意ですね。自分自身が当事者であるこの本を読んで、自戒を込めてそのこと事を認識しました。

そして、茂木さんの話は次のように続きます。
それにしても、私たちは、なぜ、次から次へと「ニュータイプ」を必要とするのだろう。社会全体が。ある日突然「オタク」や「腐女子」になってしまうわけではない。それでも報道のトーンは時にセンセーショナルになる。現代社会における普通の生き方が、それだけ手応えのないものになってしまっているのだろう。
「腐女子」って呼び名は、自分達にとってはだいぶ前から見慣れた単語だったので、今更「ニュータイプ」だとも「センセーショナル」だとも思いませんでしたが、一般世間的にはそういう受け留め方になるんでしょうか・・・。普通じゃない「ニュータイプ」と言われても、「普通の生き方に手応えを感じないのか」と問いただされても、困ります。

私個人としては、普通に生きる為の「箸休め」のようなモノだし、時には日常を検証する材料にもなると思っていますから。
意外性のある新しい価値観、行動パターンに接して驚かされでもしなければ、現代人は、普通であることの意味を見いだせない。隣国からの脅威でもなければ、国家を実感できない。こうして、普通であることの価値はスリリングにも腐り、侵食されて行く。
「腐女子」という物語をどう読むか? 問われているのは「普通」の側の想像力である。
という茂木さんのご意見には同意しかねます。別に「腐女子」は隣国からの脅威のようなものではなくて、普通に日常を送る人びとの一部の中に内在している属性に過ぎません。これから先、もしかしたら、今はまだその属性を持たない普通の人びとの中に、次第に侵食して行くかもしれませんが、それはその人びとが普通であることを腐らせるものではないと、私は思います。

「本よみうり堂」の書評はYOMIURI ONLINEで読むことができます。
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うっかり死ねない・・・。
2006-10-27 Fri 00:12
何度か書いておりますが、BL小説にハマったのは、パソ通で知りあった方から「フジミ」を教えてもらったのがキッカケでした。教えて下さった方は一回り位はお若くて、まだ20代だったんじゃないでしょうか。しかし、その時私はすでに既婚子持ちの30代半ば(笑)

そして気が付いたらBL本を読み続けて幾星霜・・・。その間に溜まった小説やら漫画やら雑誌やらその他諸々が押入れのダンボールに保管されているんです。これ、ダンナや息子には絶対見られたくないですね。BLだけじゃなくて、ドラゴンボールやヒカ碁の同人誌(含やおい)もあるし・・・。

あんまり溜まって来たので、今年になってから少しは整理して、ダンボール数箱分は処分(古書店に売ったり捨てたり)したんですが、まだまだあるんです。減らしたと思っても新しい本を買ってしまってますしねぇ。

今のところ体は健康ですが、不慮の事故とかに遭ってしまったら困るなと、切実に思います。勿論、まだ息子が成人してないのにとか、両親健在なのに親不孝だわ、という真っ当な理由もあるにはありますが、「押入れのダンボールを誰にも見られたくない」という理由が大きいです。
BL読んでる事は、ダンナにはチラッと話した事があります。で「何で女性がこういう作品を読むのか」ということに触れたら、「それは本能でしょう(エロを求める事が)」と言い切られて終わったので、それ以後深く話しておりません。息子は母が漫画好き本好きなのは知ってますが、BL読んでるとは知らないでしょうし、そもそも「BLとは何ぞや」を知りません。そういう意味では、息子にBL系蔵書を見られるのが一番嫌ですね。

今日は仕事が休みだったので、暮れに向って家の片付けもしなければと、一般本を入れてる本棚を整理していたら、カバー付きのBL漫画が出てきました。初田しうこさんと高口純里さんの本です。押入れのBL本整理した時無かったので、何処に入れちゃったんだろうと思ってたんですよ。初田さんの漫画なんて結構過激なので、家族に見つかったらヤバいです。もっとキッチリ片付けなくては!

それにしても、順次減らしていかなくちゃなぁ、BL本の山・・・。

そのタイトルにも勝手に近親感を持たせていただいてる、lucindaさんの「30半ばにしてやおいにハマる」へTBさせていただきます。
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1990年代のBL系文庫 追記・訂正
2006-10-21 Sat 22:47
1991年・1999年分の資料が見つかりましたので、下記の分を「1990年代のBL系文庫 その2」に追記しました。あさぎりさんの作品は、新刊当時読ませていただきましたが、こんなに人気があったとは知りませんでした。

文庫本1999年
3月期 7位 あさぎり夕『僕達の永遠性』パレット
4月期 9位 桑原水菜『怨讐の門 破壊編』コバルト
6月期 9位 あさぎり夕『ラストゲーム 後編』コバルト
9月期10位 あさぎり夕『猫かぶりの君』コバルト
10月期 9位 あさぎり夕『太陽と月に抱かれて』パレット
11月期 8位 あさぎり夕『猫かぶりの君 2』コバルト

単行本1991年
7月期 28位 くりこ姫『僕の一番大嫌いなあなた』新書館

2001年以降の月間売行き良好書は、何故か『出版指標年報』に掲載されなくなったので、今のところわかりません。気になるのに残念です。他に載ってる資料はないでしょうか・・・。

それから、2005年までの資料を参考に、「1990年代のBL系文庫 その1」の文庫創刊年月も追記・訂正しました。

2001年
3月 オークラ出版 アイス文庫
9月 角川書店 ビーンズ文庫 2001(少女向け・BL色薄?)

2003年
3月 プランタン出版 プラチナ文庫(フランス書院発売)
12月 オークラ出版 アクア文庫

2004年
6月 竹書房 ラヴァーズ文庫
8月 フロンティアワークス ダリア文庫
12月 学習研究社 もえぎ文庫

2005年
2月 海王社 ガッシュ文庫
5月 幻冬社 ルチル文庫
9月 プランタン出版 ラピスmore (既存文庫は「f-ラピス」にリニューアル)
11月 オークラ出版 プリズム文庫

2006年
5月 コスミック セシル文庫

2006年のセシル文庫はネット調べですが、まだあまり書店で見かけませんね。
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1990年代のBL系文庫 その2
2006-10-19 Thu 23:17
引続き90年代のBL系文庫の話題です。『出版指標年報』による月間売れ行き良好書の「文庫」部門(10位まで)から、1992年~2000年のBL系作品を書出してみました。
※ 91以前にBL系でランクインしている作品はありませんでした。(1999年は10/21追記)

さて90年代、特に下の4作品は人気で、新作が出る度にベスト10入りする勢いでした。

「炎の蜃気楼シリーズ」桑原水菜 集英社コバルト文庫90年11月~04年4月
「タクミくんシリーズ」ごとうしのぶ 角川ルビー文庫92年4月~続行中
「フジミシリーズ」秋月こお 角川ルビー文庫94年4月~続行中
「僕達シリーズ」あさぎり夕 小学館パレット文庫94年6月~02年4月

下に書出した中で、桑原さんと秋月さんは全て上のシリーズです。ごとうさんも『ロレックスに口づけを』以外は「タクミくんシリーズ」で、その『ロレックス・・・』も「タクミくん」リンク作品です。あさぎりさんも題名からわかるようにパレット文庫作品は全て上記シリーズです。

1992年
8月期 9位 桑原水菜『覇者の魔鏡 中編』コバルト

1993年
4月期 8位 ごとうしのぶ『ロレックスに口づけを』ルビー
8月期 3位 須和雪里『ミッドナイト・レベリー』ルビー  
11月期 2位 桑原水菜『わだつみの楊貴妃 中編』コバルト
12月期 2位 ごとうしのぶ『虹色の硝子』ルビー
     5位 桑原水菜『わだつみの楊貴妃 後編』コバルト

1994年
2月期 7位 結城惺『STAY 2』ルビー
4月期 4位 ごとうしのぶ『恋文』ルビー
     5位 吉原理恵子『ジグソー・パズル』ルビー
     9位 秋月こお『寒冷前線コンダクター』ルビー
7月期 5位 桑原水菜『黄泉への風穴 後編』コバルト
10月期 8位 ごとうしのぶ『恋文』ルビー
12月期 7位 ごとうしのぶ『通りすぎた季節』ルビー
     9位 桑原水菜『火輪の王国 前編』ルビー

1995年
4月期 3位 桑原水菜『火輪の王国 中編』コバルト
     8位 吉原理恵子『私立「海峰・スキャンダル」』ルビー
5月期 7位 秋月こお『リサイタル狂騒曲』ルビー
7月期 4位 ごとうしのぶ『オープニングは華やかに』ルビー
11月期 8位 あさぎり夕『僕達の白昼夢』パレット
12月期 7位 桑原水菜『火輪の王国 烈風編』コバルト

1996年
2月期 3位 桑原水菜『火輪の王国 烈濤編』コバルト
     9位 秋月こお『未完成行進曲』ルビー
4月期 4位 桑原水菜『裂命の星』コバルト
6月期 9位 あさぎり夕『ゼウスの恋人』コバルト
7月期 3位 桑原水菜『十字架を抱いて眠れ』コバルト
11月期 6位 あさぎり夕『僕達の禁猟区』コバルト
     8位 ごとうしのぶ『バレンタインラプソディ』

1997年
3月期 7位 秋月こお『サンセット・サンライズ』ルビー
7月期 4位 桑原水菜『魁の蠱』コバルト
    10位 あさぎり夕『僕達の愛言葉』パレット
10月期 5位 桑原水菜『砂漠殉教』コバルト
11月期 7位 あさぎり夕『僕達の卒業式』パレット
   10位 ごとうしのぶ『美貌のディテイル』ルビー
12月期 8位 ごとうしのぶ『美貌のディテイル』ルビー
      9位 桑原水菜『怨讐の門 青海編』コバルト

1998年
3月期10位 秋月こお『運命はかく扉をたたく』ルビー
4月期10位 桑原水菜『怨讐の門 赤空編』コバルト
7月期 5位 桑原水菜『怨讐の門 白雷編』コバルト
9月期10位 あさぎり夕『秘密の花園』コバルト
10月期 5位 桑原水菜『怨讐の門 黒陽編』コバルト
     10位 あさぎり夕『僕達の裏切り』パレット
12月期 7位 ごとうしのぶ『緑のゆびさき』ルビー
    9位 桑原水菜『怨讐の門 黄壊編』コバルト

1999年 (10/21追記)
3月期 7位 あさぎり夕『僕達の永遠性』パレット
4月期 9位 桑原水菜『怨讐の門 破壊編』コバルト
6月期 9位 あさぎり夕『ラストゲーム 後編』コバルト
9月期10位 あさぎり夕『猫かぶりの君』コバルト
10月期 9位 あさぎり夕『太陽と月に抱かれて』パレット
11月期 8位 あさぎり夕『猫かぶりの君 2』コバルト

2000年
4月期 8位 桑原水菜『耀変黙示録1』コバルト
6月期10位 あさぎり夕『僕達の大逆転』パレット 
8月期10位 斑鳩サハラ『お兄さんは生徒会長様 2』ルビー
9月期 8位 あさぎり夕『ブルーな子猫』コバルト
11月期 8位 あさぎり夕『猫かぶりの君 4』コバルト
12月期 8位 ごとうしのぶ『彼と月との距離』ルビー

97年98年にはBL系文庫がいくつも新創刊されましたが、コバルト・ルビーに迫る人気作品はまだ出ていなかったんですね。2001年以降は資料を持っていないのでわかりませんが、読者の好みも細分化していそうな気がするので、新しいレーベルからベスト10入りするような人気作品がどれだけ出ていたのか、気になります。

参考までに上記期間のBL以外の傾向も見てみました。コバルト文庫の少女向け作品では、氷室冴子・藤本ひとみ・前田珠子・若木未生、ティーンズハート文庫では折原みと・小林深雪などの作品が何度も月間ベスト10に名を連ねていました。

少女向け文庫以外では、菊池秀行「Dシリーズ」朝日ソノラマ文庫、水野良「ロードス島伝記」スニーカー文庫(他に電撃文庫や富士見ファンタジア文庫作品)、深沢美潮「フォーチュン・クエスト」スニーカー文庫・「デュアン・サーク」電撃文庫、上遠野浩平「ブギーポップ」電撃文庫などや、田中芳樹「創竜伝」講談社文庫・「銀河英雄伝説」徳間文庫、栗本薫「グイン・サーガ」ハヤカワ文庫JAなどもベスト10常連でした。

その他の一般文庫では、赤川次郎・内田康夫・西村京太郎・宮部みゆきなどのミステリー系作品や、吉本ばなな・群ようこなどの作品が売れた様です。コミック文庫の作品も多数ベスト10入りしていました。

BL作品の話に戻ると、この期間に「単行本」部門でも30位以内に入った作品がありました。

1991年 7月期 28位 くりこ姫『僕の一番大嫌いなあなた』新書館(10/21追記)
1992年 9月期 23位 くりこ姫『さあ元気になりなさい』新書館
1994年11月期 21位 斑鳩サハラ『危ないサマーバケーション』白泉社
1995年 3月期 27位 桑原水菜『アウディ・ノス 炎の蜃気楼』集英社
1996年 3月期 27位 桑原水菜『群青 炎の蜃気楼』集英社

一般書全ての中での順位ですので、10位以内というのは厳しかったのでしょうが、それでもかなり売れたと言っていいのではないでしょうか。「炎の蜃気楼」の人気はやっぱり凄かったんですね。私は最初の2巻しか読んだことがないので、出だしは転生物ファンタジーでBL色はそんなに無かった様に思いました。でもその後の展開がBLファンの琴線に触れたのか、この作品でBLにハマったファンも多いようです。コバルト文庫の稼ぎ頭ですよね。14年間コンスタントにファンを惹きつける作品を書き続けた、桑原水菜さんの功績大だと思います。

それから、資料が無くて残念ですが、新書ノベルズ部門に限ったら、かなりのBL系作品がベスト10入りしていると思われます。今はこの頃よりもっと売れてるかもしれませんね。機会があったら2001年以降の資料も見てみたいと思います。(残念ながら『出版指標年報』には2001年以降の月間売行き資料はありませんでした)
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1990年代のBL系文庫 その1
2006-10-18 Wed 23:43
ルビー文庫の事に触れたら、他のBL文庫の事もちょっと気になったので、以前図書館でコピらせていただいた出版科学研究所『出版指標年報』の文庫本に関するデータを見てみました。
まずは、一般老舗文庫の創刊年から。

1927年 7月 岩波文庫
1931年10月 春陽文庫
1933年 4月 新潮文庫

戦前に創刊されていたのは以上3文庫。戦後の有名所は以下の通りです。

1949年 6月 角川文庫
1959年 5月 創元推理文庫
1970年 8月 ハヤカワ文庫
1971年 7月 講談社文庫
1973年 6月 中公文庫
1974年 6月 文春文庫

これ以降、ライトノベルズ系の文庫も創刊される様になります。

1975年11月 朝日ソノラマ文庫
1976年 4月 ハヤカワ・ミステリ文庫
     5月 集英社コバルト文庫(創刊時コバルトシリーズ)
1977年 5月 集英社文庫
1980年10月 徳間文庫
1982年12月 徳間アニメージュ文庫
1984年 4月 講談社X文庫
1986年 2月 講談社X文庫ティーンズハート(今は見かけません)
1988年 3月 角川スニーカー文庫

そして90年代に入り、いよいよBL系の文庫が登場します。

1991年 4月 講談社X文庫ホワイトハート
     7月 小学館パレット文庫
1992年12月 角川ルビー文庫
1993年 7月 小学館キャンパス文庫(今は新刊出てない様です)

今ではBL系作品も多いコバルトですが、当初は少女向け文庫として創刊され、この頃から次第にBL系作品も増えていったという印象があります。「炎の蜃気楼」ヒットの影響は大きかったでしょうね。

ホワイトハートも、少女向けだったティーンズハートより少し上の年齢層をターゲットにして出されたようですが、特にBL系を目指していた訳ではないようです。新人作家発掘のためのホワイトハート大賞も「広い意味での恋愛・青春小説」を募集し、選考委員は内館牧子と秋元康でした。その第1回大賞に選ばれたのが、たけうちりうとさんの『INTENSITY』(94年7月発行)だったのですが、選評で、内館は「ゲイの息子を持った母親の人間像が描けていた」と評価し、秋元は「ゲイというテーマが古い」などと批評していました。『INTENSITY』はBLというより、一般恋愛小説として世に出たことになります。これは、今に至るホワイトハートのBL系作品の路線や雰囲気にも何となく影響している様な気がします。

それでもコバルトやホワイトハートは、スニーカーからルビーが生まれた様な住み分けはしなかったんですね。そのルビーも創刊当初は、藤本ひとみ・深沢美潮・林葉直子・図子慧などの非BL少女小説作家の作品もあった様なので、スニーカーから女性向け作品を独立させたレーベルを作る予定だったのでしょうか。それが数年のうちにすっかりJUNE系作品一色になり、BL専門文庫の老舗として現在に至ります。

その後93年後半から96年にかけては、各社ゲーム系文庫やコミック文庫の創刊に力をいれています。96年3月にはビブロスコミック文庫も創刊されましたが、2000年以降新刊は出してない様子です。その間BL系小説文庫は新創刊されませんでしたが、97年98年にいきなりBL専門文庫が乱立し始めます。

1997年
5月 プランタン出版ラピス文庫(フランス書院発売)
6月 徳間書店キャラ文庫
7月 新書館ウィングス文庫
7月 白泉社花丸文庫

1998年
1月 二見書房シャレード文庫
5月 光風社クリスタル文庫(成美堂出版発売)
12月 新書館ディアプラス文庫

1999年
8月 角川書店ティーンズルビー文庫(今は新刊出てない様です)

この時期、コバルト「炎の蜃気楼」・ルビー「タクミくん」「フジミ」・パレット「僕達シリーズ」などの人気作品が、常に文庫本売上げのベスト10に入っていました。(詳しくは「その2」で)各出版社は、新書ノベルズとは別により安価な文庫にも力を入れたのでしょう。はっきり解りませんが、時期的にインターネットの普及がBLファン拡大に繋がったのではないかとも思います。

『出版指標年報』のデータはここまでしかないので、後は書店で見かけ文庫をピックアップして、創刊年をネット検索などで調べてみました
2005年までは『出版指標年報』調べです。2006年はネット検索にて。(10/21追記・訂正)

2001年
3月 オークラ出版 アイス文庫
9月 角川書店 ビーンズ文庫 2001(少女向け・BL色薄?)

2003年
3月 プランタン出版 プラチナ文庫(フランス書院発売)
12月 オークラ出版 アクア文庫

2004年
6月 竹書房 ラヴァーズ文庫
8月 フロンティアワークス ダリア文庫
12月 学習研究社 もえぎ文庫

2005年
2月 海王社 ガッシュ文庫
5月 幻冬社 ルチル文庫
9月 プランタン出版 ラピスmore (既存文庫は「f-ラピス」にリニューアル)
11月 オークラ出版 プリズム文庫

2006年
5月 コスミック セシル文庫 

※ 参考にさせていただいたサイト
「FANTASY Bookmark」
「現代日本ファンタジー文学私論」「第二章ファンタジーの系譜」
「ライトノヴェルズ総合情報ページ」「ライトノヴェルズに該当するレーベル」
その他、各出版社のサイトも参考にしました。
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ルビー文庫の思い出
2006-10-16 Mon 18:55
先日、角川書店から『The Ruby(ザ・ルビー)』という雑誌が発行されました。その名の通りルビー文庫関連雑誌です。ルビー文庫はBL系としては老舗ですし、かつては小説道場出身者のデビューの場でもあったりと、わりと思い入れがありました。そんなルビー文庫から初めての雑誌という事で買ってみました。

「フジミ」と「タクミくん」の短い新作小説が載っていましたが、あと知ってるのは近頃読んでない吉原理恵子さんの『子供の領分』だけでした。中村春菊さん原作で藤崎都さんが書いてる人気作『純愛ロマンチカ』も読んだことなかったです。思えばいつの間にか「フジミ」と「タクミくん」の新刊位しか買わなくなったルビー文庫ですが、以前は随分読ませていただきました。

私は「フジミ」でBLにハマったので、初めて読んだBL本もルビー文庫です。その当時(98年頃)のルビーというと、「フジミ」「タクミくん」以外には、尾鮭あさみさんが「ダダ&一也」シリーズの他に「雷&冥」シリーズを書いていたり、斑鳩サハラさんの「悪魔さんにお願い」シリーズや、吉原理恵子さんの学園モノ作品や、須和雪里さんのトンデモ学園系シリーズ(?)があったり、そうかと思うと白金みるくさんの『プラスチィクの卵』シリーズや柏枝真郷さんの社内恋愛系のシリーズもあったりと、と中々個性あふれるラインナップでした。

それと、中島梓さんの『小説道場』を参考にした事もあって、JUNE掲載作品が多かったルビー文庫は、古書店でも探してずいぶん読みました。92年の創刊当時、すでに角川スニーカー文庫から出ていた作品もルビーに移ったのですが、古書店で見つけたそんなスニーカー作品は下記の通り。

栗本薫『終わりのないラブソング』91年
原田千尋『いつもキラキラしていた…』90年 『北点抄』91年
三田菱子『鼓ヶ淵』90年
野村史子『レザナンス・コネクション』90年『テイク・ラブ』91年
ごとうしのぶ『そして春風にささやいて』タクミくんシリーズ 92年

その他、ルビー文庫で思い出深い作品といえば、

吉原理恵子『銀のレクイエム』93年 『影の館』94年
須和雪里『タブー』『サミア』93年
尾鮭あさみ『ミスティ・サークル』ダダ&一也シリーズ 93年
森内景生『夜の館』94年 『花鳥風月』シリーズ 94年
秋月こお『寒冷前線コンダクター』フジミシリーズ 94年
神崎春子『家族の肖像』シリーズ 96年 
白金みるく『プラスチィクの卵』シリーズ 97年
金丸マキ『絶対服従』97年(95年小説JUNE掲載「夕暮れのバス」所収)
剛しいら『帰宅』97年
柏枝真郷『雨かもしれない』厄介な連中シリーズ 96年
湊川理絵『春いちばん』春ちゃんシリーズ 99年

などなどです。上の話とダブってる作品もありますが、ざっと思いつくだけでもこんな感じです。訳も解らずハマって行った頃に読んだので、特に思い入れがあるのだと思います。後から解ったのですが、98年頃というとBL系の文庫が次々創刊された時代で、今思えば地元書店の売り場もかなりにぎやかでした。それでも、何となく明るい雰囲気のそれらの文庫より、当時はJUNE系のルビー文庫が好きでした。

でも何時の間にかルビー文庫の執筆人も代わって、気が付いたら「フジミ」と「タクミくん」しか読む作品がなくなっていました・・・。ルビー文庫自体は、『純愛ロマンチカ』などの人気作品を出すなど、90年代後半とは少し違う路線で健闘しているようですね。そして、より若い読者を想定したティーンズルビー文庫が枝分かれして、その流れをくむビーンズ文庫も創刊され、「まるマ」シリーズや「彩雲国物語」みたいな人気作品も生まれてますね。何といっても、あのNHK教育TVでアニメ化されているんですから、世の中の流れは大変な事になっているなぁ、と思います。
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腐女子化する世界
2006-10-10 Tue 23:47
杉浦由美子 著 (中公新書ラクレ 2006年10月10日発行)
サブタイトル「東池袋のオタク女子たち」

前著「オタク女子研究 腐女子思想体系」(原書房 2006年3月発行)に続き、女性のオタクがテーマの本です。著者の杉浦さんは、昨年雑誌『AERA』に書いた「萌える女オタク」という記事が注目されたことで、このテーマの本を出すようになりました。サブカルチャー本だった前著と違い、今回は新書本ですので、「腐女子」という単語に馴染みのない一般読者の目に留まる事も多いと思われ、多少の不安が・・・。

サブタイトルからしてそうなんですが、「はじめに」でも書かれてる様に、取っ掛かりは乙女ロードなんですね。それはそうなのかもしれないですが、語られる腐女子の幅を都合よく限定してしまっている様で、ちょっと残念です。それでも、当事者からの批判的感想も多く上がった前著よりは、社会的視点が加わった部分もあり、読み応えがあるとは思います。

前著は私も読みましたが、納得できる事もあるものの、疑問な点も多かったです。ざっと読んだ所では、今回の『腐女子化する世界』も取上げている例など前著と重複するところも多い印象でしたので、そこはもう少し掘り下げた内容にして欲しかったな、と思います。「ハーレクイン」や「レディコミ」「ロマン小説」「韓流ドラマ」にも言及してるのに、それとBLの関連性への踏込みがちょっと物足りなかったですね。

それから、帯にも「女たちは自分探しに飽き、自分忘れに走り出した!」なんてあるんですが、それはどうなのかなぁ? 自分を見つめる事や個性の追求に疲れて、「国家」などの自分と無関係ではないが少し抽象的で大きな括りについて語るとか、全体主義に憧れるとか、取材した何人かの方の事例をあげて語られています。その気持ちは私もわかります。けれどそれを「自分忘れ」と言われてしまうと、何だか違う様な気がします。

「関心が妄想(物語)の男性にいっているので、現実の男性への欲求が低い」っていうのも、結果としてはそうかもしれないけど、考えた順序が逆だと思うしなぁ。はじめに現実ありきですよ、人間いきなり妄想の世界には入らないです。そんな訳で、たぶん本書も当事者からの批判は多々あるものと予想されます。それ以前に「腐女子云々などと広めないでくれ!」と言いたい気もしますしね。前著の事もあるので、タイトルと帯だけでも当事者の反発を食らっているのではないでしょうか。

それでも、読み進めていくうちに納得できる部分もあります。最後に、自らを「腐女子」と呼んでしまう女性のオタクたちには客観性と冷静さがあり、それは「物語」の世界に逃避することで現実の自分を俯瞰できるからだといっています。現実の平凡な日常をキチンと生きるために「物語」を必要とするが、それは健全な現実逃避だ、という結論に至っています。途中は「?」な部分もありましたが、この結論には私も同感します。

ただね、こういう結論に達するのなら、「自分忘れ」という切り捨てた様な言い回しを前面に出さないで欲しかったです。後半になるにしたがって、現在の20代30代の女性たちが置かれている厳しい現実に触れ、格差社会の中で「嗜好」を重視したライフスタイルに向う女性たちの心情を、「生きる知恵」として肯定的に語っているのですから。

それはさて置き(置いていいのか?)、個人的に買いだと思ったのは、柏枝真郷さんへのインタビューが載っていた事です! 同じ中央公論新社のノベルズで『PARTNER』シリーズ(BLじゃないですが)を書いてるからなんでしょうが、それは嬉しかったです。

前著については、「AliNote」というサイトの「やおいにつて」に「オタク女子研究」への反応集、というのがあります。参考までに。
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B.L.T
2006-10-09 Mon 15:37
木原音瀬 著/イラスト 稲荷家房之介(ビブロス ビーボーイノベルズ 2002年2月発行)
「ライン」(同人誌より再録) 「B.L.T」(書下ろし) を所収

現在進行形のシリーズ物以外で数年前に発行されたBL本って、普通の書店で見つける事はほぼ不可能に近いですし、ネットでも絶版品切れで手に入らない本が多いです。そんな時は古書店を頼るしたかないんですが、木原さんの本は古書店でも中々見つかりません。そんな中、幸運にもめぐり会ったのがこの一冊です。
「ライン」
大学生の北澤眞人は、アルバイトの面接に行った本屋で思いがけない人物と再会した。5年前、まだ中学生だった北澤に、通学中の電車内で痴漢行為を仕掛けた男、大宮。当時サラリーマンだった大宮が、今目の前に居る書店長だった。平然と面接を行う大宮に心を乱され、北澤の脳裏に決して忘れることが出来ない5年前の出来事が蘇った。
北澤は、痴漢行為を責めて大宮を脅し、食事を奢らせ欲しいものを買わせ、部屋にも入り浸って振り回した。ゲイであるの大宮は、そんな北澤に翻弄させられながらも、本気で愛しさを募らせていた。夏休み、両親の不仲で宮崎の祖母の元に行けなくなった北澤は、大宮に連れて行って欲しいと頼み、仕事さえ放棄させてしまった。二人の心は通じたかに思えたが、北澤はそのまま宮崎に留まり、その後大宮に連絡を取る事はなかった・・・。

「B.L.T」
一度は北澤のバイトを断ろうとした大宮だったが、結局自分からキッパリ断切る事ができない想いを抱えたまま、北澤をバイトとして迎え入れる事になった。平静を装って上司の顔をしていたが、しだいに今でも北澤に惹かれている気持ちを抑えきれなくなって行く大宮。二人はやがてその想いを確認し合う。しかし、今の大宮には同棲している恋人がいた。我儘でプライドが高い男、千博。自分は平気で浮気をしてきたくせに、大宮が他の男に心を奪われたと知ると、自殺を図ってまで繋ぎとめようとする。結局大宮は北澤に別れを告げるのだが・・・。
変わったタイトルだなぁ、と思ったのですが、「B.L.T」というのはベーコン・レタス・トマトのサンドイッチのことでした。大宮と千博の共通の知人である高野のカフェのメニューにもあり、大宮が唯一作れる料理(?)でもあります。千博の元彼でもある高野は、物語のキーパソンでもあります。

『セカンド・セレナーデ』の「水のナイフ」に登場する高校生の明智君などもそうでしたが、ひとのいい大人の男を翻弄する少年の、揺れ動く内面の脆さと残酷さがひしひしと伝わって来ます。「いい加減にせい。もちっと大人になれよ!」と思いつつ愛しくて切ないですね。だから、ほだされて振り回される大宮も情けないと思いつつ、その気持ちわからなくもないです。

千博への想いはすっかり冷めて、その執拗さに辟易して殺意さえ抱いても、結局すぐには別れる事も出来ない大宮。更に情けな度が増すわけですが、千博の自殺未遂の描き方が中々緊迫していて、大宮の中の残酷さや、それを引出してしまう千博の凄まじさが、思うに任せない人間感情のもつれを克明に表現していて、BLであることを忘れそうでした。

ラスト、物語を前向きな方向に導くのは、北澤の決断でした。でも、この二人が目出度く結ばれる日が来るのかどうか、それは明確ではありません。ただ、お子様だった北澤が、すっかり大人になって強くなったなぁ、とそれがとても清々しく感じられました。

木原さんの作品には、もはやBLではないのでは(良い意味で)、という感想を目にするものも多いです。私もそう思うんですが、では一般小説かと言われると、それも少し違う気がして、やっぱりBLといえばBLなんだろうなぁ、たぶん、と思うのです。

何処かのblogの感想で、「BLというジャンルではなくて、木原音瀬というジャンルを書いている」と書いていた方がいらしたんですが、それいいなぁ、とっても納得。私もそれに一票(?)です!
しっかりブックマークしないで読んでいたので、どなたのblogかわからなくなってしまったんですが、後でまた探してみます。

P.S.
上記のblogは「月と凌霄花」さんでした。
正確には「木原さんはBLを書いてるんじゃなくて、ただ木原さんというジャンルを貫く方なのだなと思いました。」と書いておられました。ほんとうにそう思います。

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リベット
2006-10-07 Sat 00:05
木原音瀬 著/イラスト 藤田貴美(蒼竜社 HOLLY NOVELS 2006年9月発行)
「リベット」(オークラ出版「小説アイス」2001年7・9月号初出)
「リベット2」(書下ろし) 以上2作品所収

木原さんの新作が読めると楽しみにしていたので、内容などは何も吟味しないで作家買いしました。読み終えた後、ずっしりと胸に迫って来るものがありました。『箱』『檻』とはまた少し別の意味で、心に残る作品だったと思います。

物語から受けた感慨とは別に、この重いテーマをBLという枠の中で扱い、このジャンルの限界へ挑戦してるんじゃなかろうか、という木原さんの姿勢に衝撃を受けたのかもしれません。
高校教師の初芝は、誰にも言えない知られたくない問題を抱えて暮らしていた。それは、何も知らずに支えてくれる恋人の由紀に対しても、想っているからこそ打ち明けるのを恐れてしまう問題だった。ひとりでそれと立ち向かいながら、慎重に日々を過ごす初芝の気持ちを揺るがしたのは、やたらと慕ってくる職場の後輩乾の存在だった。学生時代のボランティアの経験から、初芝が抱える問題に気付いた乾は、協力を申し出る。初芝はそれを断り乾と距離を置こうとするが、その熱心さについ甘えてしまう・・・。
初芝の抱える問題をめぐって、人の心の中にあるエゴと甘え、情と残酷さを浮き彫りにしながら、それでも誰かを必要とする切なさを描いています。人間の弱さと強さ、それ故の愛しさが伝わってくる作品です。

初芝の抱えている問題とは、HIVの感染者であるという事です。それは学生時代、突然告白して来た友人に無理やり体を奪われた事が原因でした。思い余って強姦してしまう、というのはJUNE以来何度も描かれてきた展開です。そういう、時として乱暴な性愛込みの恋愛を描くBLというジャンルで、作者も読者も暗黙の了解の様に直視して来なかったHIV感染の問題。

これまで、その危険性に言及したお話はあっても、主人公がこういう形で感染した当事者というのは無かったのでは。そもそもラブファンタジーでもあるBLで、主人公に当事者を置くのはタブーであるとも云えます。あえてその難しいテーマに挑んだのは、果たして反則なのか可能性の追求なのか、はたまた問題提起なのか。読み終えてから数日、未だに自分の中で結論が出ません。

真実を告げたら恋人は離れて行き、死の恐怖に怯えながらも、無理にでもひとりで生きる覚悟をしようとする初芝。そんな彼への片想いから、時に色々と気遣いをして援助し、迷惑になると思えば距離を置く乾。やがて初芝は、乾の真直ぐな想いに触れて、自分の弱さを見せ心を開いていきます。はっきりと恋人同士になる訳ではありませんが、二人の距離がかなり縮まった所で、本編(「リベット2」まで)は終わっています。

由紀の優しさを手放すのが怖くて中々真実を告げられなかった初芝も、それを一度は受け入れようとしながら結局は去っていった由紀も、責める気にはなれません。学生時代に辛くてボランティアから逃げた乾の後ろめたさもよくわかります。だからこそ、乾が何の恐れもなく真直ぐに初芝に寄り添おうとするところに、それが純粋な愛故だとしても、少し引っかかりを感じます。

そしてカバーを外すと、そこには「もう一山も二山もあった3年後の二人」のお話があります。そこへ至る道程は勿論平坦ではなかったでしょうが、それなりのハッピーエンドを望む読者へのサービスなのでしょう。確かにホッとするけれど、BLレーベルでこのテーマを描いた木原さんの意欲作と感動しつつ、BLという枠の制約も感じました。
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暁を待つまで(タクミくんシリーズ)
2006-10-01 Sun 17:42
ごとう しのぶ 著  イラスト おおや和美
角川書店 2006年8月発行

1992年4月に角川スニーカー文庫から『そして春風にささやいて』が発行されてから足掛け15年、小説JUNEに初登場してからだと20年以上続いているシリーズの最新作です。いつものルビー文庫ではなくて、B5版の単行本で1300円と少々お高いのが難点でしたので、8月の発売に気付かず書店では品切れになっていた時点で「読まなくていいかな」とあきらめました。ところがさすが人気シリーズ、ひと月で再版かかって書店に並んでいるじゃありませんか。おおや和美さんの表紙絵の誘惑に勝てなくて、やっぱり買ってしまいました。

20年前、主人公のタクミくんとギイくんは高校2年生になったばかり、という設定で始まったこのシリーズ、物語は行きつ戻りつしながら、未だに高校3年生までしか進んでいません。近頃の学園物では、ジャンプの漫画だからジャンルは違いますが、連載7年で物語時間が1年経っていない『テニスの王子様』も凄いなと思ってました。しかし「タクミくんシリーズ」の時間の流れはさらにゆるやかです。しかも今回のお話の舞台は1年の3学期で、時間が進まないどころか逆行しております。

ギイが世界的に有名な財閥の御曹司というこの物語の設定からすると、高校卒業後の二人の関係というのはあきらかに前途多難です。にもかかわらず、全寮制の男子校という外界からの影響の少ない環境の中で、先がおぼろげにしか見えない程ゆっくりと静かに流れる時間は、穏やかに二人を見守っているかの様です。だからこそ、読者も将来の問題をしばし棚上げにして、とりあえずは安心して物語に触れ、ほのぼのと優しい気持ちになれるのでしょうね。永遠のモラトリアムとも云えるタクミくんワールドは、もはや桃源郷のようなものかもしれません。

1年生バージョンの表題作では、タクミくんはまだ片倉くんと同室で、ギイともまだ只のクラスメイトという関係です。そして、ギイ命名「人間接触嫌悪症」をバリバリ発揮して、周りとの関係がギクシャクしているタクミくんに対し、彼を意識するギイは密かに色々気を使うわけですが、タクミくんからは何のプラスのリアクションも望めません・・・。ギイくんのちょっと切ない片思いのお話です。迷惑がられるのを心配して、風邪で寝ているタクミくんのお見舞いさえも躊躇するギイくん、何と初々しいんでしょう。

全般を通してエロ度はかなり低めのこのシリーズですが、今回はキスどころか手を握ることさえありません。エロ度0%です。そういう意味では、タクミくんシリーズというのは、読者がBLに求めるモノがエロだけはない事を証明している様な作品とも言えます。

併載の「まい・ふぁにぃ・ばれんたいん」、こちらは表題作にもバレンタインがらみで出てくる三洲くんと真行寺くんの1年後のお話です。このちょっぴり噛合わないカップルもわりと好きですが、肝心のタクミくんとギイくんのお話をもっと読ませて欲しかったとも思います。

P.S.
web KADOKAWA の『暁を待つまで』コーナーで壁紙ダウンロードが出来るようです。
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