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「萌え」の起源
2009-09-20 Sun 12:07
鳴海丈 著
PHP新書 2009年9月発行

サブタイトルに「時代小説家が読み解くマンガ・アニメの本質」とあるように、時代物アニメの原作や脚本も手掛ける小説家の著者が、手塚治虫作品や時代劇作品などを取り上げながら、マンガ・アニメのキャラクターなどへ「過度に情熱を傾ける」心情の起源を、日本文化の中に探っていくサブカル論です。

一般小説をほとんど読まないので鳴海さんを存じ上げなかったのですが、1955年生まれとちょっぴり上の世代の方なので、戦闘少女の系譜として「リボンの騎士」から女剣劇のスターや志穂美悦子さんに言及しているあたりが懐かしくて、読んでみたくなりました。まだ全部読んでませんが、日本独特の伝統がある「芸能と美少年文化」についても触れています。

全体に男性オタク的「萌え」について語られている部分が多いので、BL的な事柄についてはあまり触れられていませんが、「ここが変だよ日本のヒーロー」という章では、「DRAGON BALL」を題材に、主人公の戦う意味や男性キャラ達の過剰なまでに濃厚な関係性について語っています。その中で、
ヒロインや女性キャラが魂の強い結びつきの外に置かれることに対する疎外感を、おそらく、女性読者たちは無意識に感じている。…いわゆる「やおい」が生まれた原因の一つは、そうした男の友情至上主義に対する、女性からの無言の抗議ではないでしょうか。
と女性オタクの心情を推察しています。ジャンプ系作品の女性愛読者は、たぶん疎外感以前に、それぞれのキャラにストレートに感情移入しているのではないかと思いますし、その思いを代弁する、あるいは物語に入り込んでそのキャラへの愛を語る、その手段の一つとして「やおい」というモノを生み出したのだと思うのですが、一般的には鳴海さんの様に思う方が多いのでしょうね。

そんな訳で、BL・やおい的「萌え」についての検証は殆どありません。でもそれは別にしても、現代日本人のオタク的思い入れの心情が、日本文化の伝統に育まれ受け継がれてきたモノの系譜の上にある、という論考はとても面白く読めそうです。
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密やかな教育 <やおい・ボーイズラブ>前史
2009-02-16 Mon 00:31
石田美紀 著
洛北出版2008年11月発行

2月2日の読売新聞「本よみうり堂」で、三浦しをんさんの書評を読み、この本を知りました。2600円と結構高価だったんですが、地元書店に置いて無かったので、下の書誌情報だけ見てネット買いしました。高かったけど、手元に置いて読みたい一冊でした。
三浦さんの書評はYOMIURI ONLINEに掲載されています。
--- もくじ ---
第一章 革命が頓挫したあとの「少女マンガ革命」
第二章 ヨーロッパ、男性身体、戦後
第三章 “文学”の場所で―栗本薫/中島梓の自己形成
第四章 「耽美」という新しい“教養”の効能―雑誌『JUNE』という場
1竹宮惠子インタヴュー…耽美は溺れるものではなく、するもの
2増山法恵インタヴュー…少女マンガにおける「少年愛」の仕掛け人
3佐川俊彦インタヴュー…文学と娯楽の間を行ったり、来たり

--- 内容紹介 ---
「やおい・ボーイズラブ」というジャンルも、その愛好者を指す「腐女子」という分類もなかった70年代……少女マンガと小説の場に出現した「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」は、旧い教養(三島由紀夫、ヘッセ、稲垣足穂、ヴィスコンティ…)をどん欲に取り入れ、エンターテインメント教養ともいうべき独自の体系へと成長していった。
本書は、この性愛表現が誕生し、80年代に充足してゆくまでの軌跡に光をあてる。「女こども」とみなされていた女性の創作者たちは、なにを糧とし、いかなる葛藤に直面し、どのように次世代へとリレーしていったのだろうか。
詳しくは洛北出版サイトをご覧ください。

石田美紀さん、この本を知るまで存じ上げませんでしたが、新潟大学准教授で映像文化論が専門だそうです。1972年生まれの石田さんにとって、「風と木の詩」をはじめとする少女マンガが、初めて接するヨーロッパであり、大人の、色気ある世界を教えてくれた、最初の作品でもありました。その時の衝撃に少なからぬ影響を受けたことが、本書執筆のきっかけになっているようです。

70年代初め、60年代に若者中心に盛上りを見せた変革への機運は、三島由紀夫の自殺やあさま山荘事件への帰結によって、終止符が打たれる形となりました。その直後、少女マンガと文学の中から「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」が生まれました。それまでの女性文化とは一線を画すこの動きには、「私にも何かできるだろうか」という問いと、「私にも何か出来るはず」という信念があったことを忘れてはいけない、と著者は書いています。

その背景として説明される古い教養、ヘルマン・ヘッセ、稲垣足穂、三島由紀夫、雑誌「血と薔薇」、ルキノ・ヴィスコンチィ…。ヨーロッパへの憧れ、男性身体が表現するものの変容、戦後という時代…。竹宮恵子の「少年愛」マンガに始まり、やがて「JUNE」という場に広がりを見せる、このジャンルの「前史」を分析しています。

第四章に、小説道場出身のJUNE作家で映画評論家でもあった、故石原郁子さんについての記述があります。
結婚後、夫の転勤のために常勤の教師職を離れた石原は、出産と育児を経験しながら、映画批評と「耽美」小説を執筆し続けた。それは、ほかの誰のためでもない、自分のためだけに行った密やかな教育であった。
そして今、私たちは、彼女の残した批評や小説のなかに、ひとりの女性が「何かできるはずだ」と筆をとった意思を読み、彼女の思考が目指すものを辿り、到達したところを知ることができる。この営みを文化と呼ばずして、何を文化と呼べばいいのだろうか。
とその最後を結んでいます。映像文化論を専門する石田さんにとって、特に石原さんの残したものには、深い思いがあったのだろうと察せられます。

本書は、かつて当事者である榊原史保美さんが書いた「やおい幻論」や、中島梓さんの「タナトスの子供たち」「小説道場・やおいゲリラ宣言」とはまた違って、より広い視野で冷静に見据えた著書です。「女性がつくり楽しむ男性同士の性愛物語」であるこのジャンルが、「JUNE」から「ボーイズラブ」へと変容した時代に、榊原さんや中島さんの、心の内を吐露するような著書が生まれました。今また何か、このジャンルの潮流が変わろうとしている様に思える時に、真摯にこのジャンルを捉え顧みようという著書が出てきたことは、意味のあることだと感じました。

P.S.
三浦さんの書評でこの本を知った、と書きましたが、昨年たいまつさんの「一日一やおい」で紹介されてたのを見てました。その時すぐに読めばよかったんですが、三浦さんの書評がなかったら、うっかり忘れてるところでした。読めて良かったです。(2/20追記)
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腐女子の品格
2008-01-17 Thu 03:17
腐女子の品格制作委員会 編 イラスト・マンガ 腐女 
リブレ出版2008年1月10日発行

ロングセラーとなっている藤原正彦さんの『国家の品格』(新潮新書2005年11月)に続き、二匹目のドジョウを狙った坂東真理子さんの『女性の品格』(PHP新書2006年10月)もベストセラーとなって、2006年の流行語大賞にも選ばれた「品格」。『ハケンの品格』というドラマも話題になりましたね。

三匹目を狙ってか、はたまた坂東さんに挑むのか・・・っていうのは有り得ないでしょうから、まあ単なるシャレだとは思いますが、リブレさんまでもが出しましたね「品格」本。

先進国の社会の荒廃の原因として近代的合理精神を挙げ、自由平等は欧米が作り上げたフィクションであると民主主義に疑念を抱き、日本の伝統的精神性の復活を願う『国家の品格』。偏りはあるなと思いつつもこれは中々興味深く読ませていただきました。話題になったそのタイトルも編集者さんのアイデアに感心しましたが、その後に次々出てきた「品格」本には、何だかタイトル見ただけでガックリでした。

それでも『女性の品格』は気になったので一応手にとって目次までは見ましたが、その時点でアウトでした(^^;) BL小説でも火崎勇さんの『花嫁の品格』(ショコラノベルス2007年11月)がありましたね。ついにBLにもこの波がと思っていたら、リブレさんが『腐女子の品格』を出版しました。これはトドメだと思い、つい買ってしまいました・・・。
腐女子とは、ボーイズラブややおいなど
"男性同士の同性愛ネタ"をこよなく愛し、
絶え間ない妄想でもって力強く現代を生き抜く
麗しき乙女たちのことである。
という定義からはじまり、ハウツー型漫画を中心に構成さています。何事にも腐知識や腐発想を上手く用いて公私ともに生活を充実させ、前向きに腐女子ライフ楽しもうという内容です。

出来る腐女子OLの先輩と地味系かくれ腐女子LOの後輩が登場し、品格ある腐女子を目指すノウハウを紹介しています。ここまで極端なBL&やおいファンは居ないでしょうが、いくつかは心当たりのあるネタが・・・。
印象としては、明るい腐女子ライフを提唱するリブレさんの販促本かもと思いました。

個人的には「品格本を笑い飛ばせ」という意味でも面白かったです。
とにかく沢山あるんですよ「品格」本。某大手書店さんのサイトで検索したら下の通りでした。暇人ですね私(汗) それにしても『女性の品格』以降がすごいです。

不倫の恋の品格:亀山早苗/WAVE出版2008年2月予定 [予約受付中]
「生きる力」をつけるための高校生の品格:松野惠一/文芸社2008年1月
親の品格:坂東真理子/PHP新書2008年1月
ヤマダ電機の品格-No.1企業の激安哲学-:立石泰則/講談社 2008年1月

池田大作の品格-万乗の君にあらず-:小多仁伯/日新報道 2007年12月
山本一力の江戸の品格:松枝史明/成美堂文庫2007年12月
トヨタの品格:伊藤欽次/洋泉社(ペーパーバックス) 2007年12月
◆花嫁の品格:火崎勇/心交社ショコラノベルス2007年11月
子どもの品格:高橋義雄/ヴィレッジブックス(ソニ-・マガジンズ) 2007年11月
人間の品格-安岡正篤先生に学ぶ-:下村澄/PHP研究所(新装版)2007年11月
父親の品格-凛として、父親としての自覚-:川北義則/ダイヤモンド社2007年09月
会社の品格:小笹芳央/幻冬舎新書2007年9月
「話し方」の品格-「品のいい人」になれる10か条-:福田健/経済界(新書) 2007年10月
恋の品格-「いい恋」をしたい女性のために-:角川いつか/白夜書房 2007年10月
マナ-でわかる大人の品格:岩下宣子/三笠書房知的生きかた文庫2007年10月
月イチゴルフの品格-シングルに近づく100のステップ-:神田恵介
                                  幻冬舎ルネッサンス2007年9月
ユダヤ人に学ぶ日本の品格:エリ・コ-ヘン/藤井厳喜/PHP研究所 2007年9月
男の品格2-白洲次郎名言集-:清水將大/コスミック新書2007年8月
日本人の品格:渡部昇一/ベストセラ-ズ新書 2007/07月
人間の品格-日本人のあるべき生き方・働き方・リ-ダ-学-:馬場啓一
                                     こう書房 2007年7月
男の品格-二宮金次郎名言集-:清水將大/コスミック新書2007年7月
上司の品格-人の上に立つ者の心得-:今泉正顕/PHP文庫2007年6月
元帥の品格-東郷平八郎の実像-:嶋田耕一/毎日ワンズ2007年6月
エロスの品格:三葉りを/松文館(別冊エ-スファイブコミックス)2007年5月
企業の品格:皆木和義/PHP研究所2007年5月
人間の品格-『論語』に学ぶ人の道-:日本論語研究会/内外出版2007年4月
◆ハケンの品格:漫画平田京子/ドラマ脚本中園ミホ/講談社コミックスデザ-ト2007年4月
お金の使い方でわかる大人の「品格」:山崎武也/三笠書房知的生きかた文庫2007年4月
一流の品格、三流どまりの品格:山崎武也/ゴマブックス2007年4月
失言から見た政治家の品格:牧野武文/インフォレスト(ロ-カス) 2007年3月

事典にのらない日本史有名人男の品格(別冊歴史読本)/新人物往来社 2006年11月
政治の品格-石橋湛山と遠山正瑛に学ぶ-:後藤臣彦/原書房 2006/11月
真説・会津白虎隊会津藩に学ぶ品格:早川広中/双葉社2006年11月
大統領の品格:宮本信生/グラフ社2006年10月
◆女性の品格-装いから生き方まで-:坂東真理子/PHP新書2006年10月
医学・医療の品格:久道茂 /薬事日報社新書2006年9月
総理の品格:瀧澤中/ぶんか社文庫2006年9月
おやじの品格:嶋中労/グラフ社 2006/08月
社長力話題の経営者たちの実力と品格:有森隆/草思社2006年6月
日本人の品格 -新渡戸稲造の「武士道」に学ぶ-:岬竜一郎/PHP文庫2006年6月
日本人の品格:北影雄幸/光人社2006年6月
仕事の品格:山崎武也/講談社+α文庫2006年5月

◆国家の品格:藤原正彦/新潮社新書2005年11月
社長の品格:清水一行/光文社文庫2005年7月
老いの品格:松永伍一/大和書房1998年
日本人の品格:渡部昇一/PHP研究所1993年
人間の品格-安岡正篤先生から学んだこと-:下村澄/大和出版1991年
日本の品格-世界から求められるもの-:大河原良雄/光文社1990年
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腐女子マンガ大系
2007-06-13 Wed 22:58
ユリイカ6月臨時増刊号(青土社)

たいまつさんの「一日一やおい」で紹介されていて知りました。ユリイカで腐女子特集というのが中々面白そうだなぁと思いまして、さっそく発売日の昨日買って来ました。未だざっと見ただけで全部は読んでないんですが、多彩な執筆陣で読むのが楽しみ、読み応えがありそうです。詳しくは「青土社」のサイトで紹介されますので、ご覧になってみて下さい。表紙のイラストは草間さかえさんです。

たいまつさんも「男もすなるボーズラブ」というタイトルで書かれています。今までもこのジャンルについて論じている男性はおられましたが、ご自身も読者という当事者によって、しかも男性読者について書かれているのは初めて読んだような気がします。男性読者がBLを楽しむためには「腐女子眼鏡」を手に入れる必要がある、というお話に「なるほど!」と思いました。他にも女性読者とは少し違う視点で色々と語られているのが興味深かったです。

上野千鶴子さんは、お名前を見てちょっと驚いて思わず最初に読んじゃいました。ご自身が当事者ではないので、何か違うよなぁと感じる部分も多々あるのですが、「(BL愛好者を)他の女子文化と区別するのは異性の視線を意に介さないナルシシズムであろう」と言われてハッとしました。異性の視線はともかく、BLを読むことがある種の自己愛かもと感じる事はあるので・・・。

同世代という事もあり、その発言には割りと注目している香山リカさん。上野さんよりはサブカルに親しんでると思われますが、BLに関しては彼女も当事者ではないのでやっぱり納得いかない部分もありました。「(男同士の物語の中で"私を消して")関係性の病から解放されている、とも言える」というのは逆じゃないかとも思いました。私自身は、問題としている関係性を架空の物語の中に投影することで満たしている部分がありますもの。

いつも寄らせていただいてる「la aqua vita」のtatsukiさんが、全体にわたる詳しい感想を書かれてます。いつもながらの鋭さに感心しつつ興味深く読ませていただきました。
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読売新聞に「腐女子化・・・」の書評が
2006-10-31 Tue 02:35
10月29日の読売新聞「本よみうり堂」に「腐女子化する世界」の書評が載っていました。
評者は、脳科学者の茂木健一郎さん。
従来の人間観、類型では捕らえきれない価値観や行動パターンを示す人びとが登場する度に、呼び名が自然発生的に誕生し、メディアの中で報道されることで市民権を得る。そして、私たちは新しい現実に触れた気にさせられる。
「新人類」「オタク」「やおい」「ニート」「フリーター」といった前例をあげて、今度はそれが「腐女子」なのだ、と評者は感じたようです。でも、この中で「やおい」だけは、ある特定の人びとの呼び名ではありませんよ、茂木さん。ある特定の人びとが愛好するモノ(というのか?)です。そして、その人びとが「腐女子」なんですよ~。と思わず突っ込みを入れてました(^^;)

それはともかく「メディアで報道されることで市民権を得る」というのは、その通りでしょうね。ただ、そうなると呼び名だけが独り歩きして、変な固定観念が出来てしまう危険性があります。茂木さんの言うように「現実に触れた気にさせられる」だけで、本当の現実を見ようとしない場合があると思います。「腐女子化する世界」のような本は、そこらあたりが要注意ですね。自分自身が当事者であるこの本を読んで、自戒を込めてそのこと事を認識しました。

そして、茂木さんの話は次のように続きます。
それにしても、私たちは、なぜ、次から次へと「ニュータイプ」を必要とするのだろう。社会全体が。ある日突然「オタク」や「腐女子」になってしまうわけではない。それでも報道のトーンは時にセンセーショナルになる。現代社会における普通の生き方が、それだけ手応えのないものになってしまっているのだろう。
「腐女子」って呼び名は、自分達にとってはだいぶ前から見慣れた単語だったので、今更「ニュータイプ」だとも「センセーショナル」だとも思いませんでしたが、一般世間的にはそういう受け留め方になるんでしょうか・・・。普通じゃない「ニュータイプ」と言われても、「普通の生き方に手応えを感じないのか」と問いただされても、困ります。

私個人としては、普通に生きる為の「箸休め」のようなモノだし、時には日常を検証する材料にもなると思っていますから。
意外性のある新しい価値観、行動パターンに接して驚かされでもしなければ、現代人は、普通であることの意味を見いだせない。隣国からの脅威でもなければ、国家を実感できない。こうして、普通であることの価値はスリリングにも腐り、侵食されて行く。
「腐女子」という物語をどう読むか? 問われているのは「普通」の側の想像力である。
という茂木さんのご意見には同意しかねます。別に「腐女子」は隣国からの脅威のようなものではなくて、普通に日常を送る人びとの一部の中に内在している属性に過ぎません。これから先、もしかしたら、今はまだその属性を持たない普通の人びとの中に、次第に侵食して行くかもしれませんが、それはその人びとが普通であることを腐らせるものではないと、私は思います。

「本よみうり堂」の書評はYOMIURI ONLINEで読むことができます。
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腐女子化する世界
2006-10-10 Tue 23:47
杉浦由美子 著 (中公新書ラクレ 2006年10月10日発行)
サブタイトル「東池袋のオタク女子たち」

前著「オタク女子研究 腐女子思想体系」(原書房 2006年3月発行)に続き、女性のオタクがテーマの本です。著者の杉浦さんは、昨年雑誌『AERA』に書いた「萌える女オタク」という記事が注目されたことで、このテーマの本を出すようになりました。サブカルチャー本だった前著と違い、今回は新書本ですので、「腐女子」という単語に馴染みのない一般読者の目に留まる事も多いと思われ、多少の不安が・・・。

サブタイトルからしてそうなんですが、「はじめに」でも書かれてる様に、取っ掛かりは乙女ロードなんですね。それはそうなのかもしれないですが、語られる腐女子の幅を都合よく限定してしまっている様で、ちょっと残念です。それでも、当事者からの批判的感想も多く上がった前著よりは、社会的視点が加わった部分もあり、読み応えがあるとは思います。

前著は私も読みましたが、納得できる事もあるものの、疑問な点も多かったです。ざっと読んだ所では、今回の『腐女子化する世界』も取上げている例など前著と重複するところも多い印象でしたので、そこはもう少し掘り下げた内容にして欲しかったな、と思います。「ハーレクイン」や「レディコミ」「ロマン小説」「韓流ドラマ」にも言及してるのに、それとBLの関連性への踏込みがちょっと物足りなかったですね。

それから、帯にも「女たちは自分探しに飽き、自分忘れに走り出した!」なんてあるんですが、それはどうなのかなぁ? 自分を見つめる事や個性の追求に疲れて、「国家」などの自分と無関係ではないが少し抽象的で大きな括りについて語るとか、全体主義に憧れるとか、取材した何人かの方の事例をあげて語られています。その気持ちは私もわかります。けれどそれを「自分忘れ」と言われてしまうと、何だか違う様な気がします。

「関心が妄想(物語)の男性にいっているので、現実の男性への欲求が低い」っていうのも、結果としてはそうかもしれないけど、考えた順序が逆だと思うしなぁ。はじめに現実ありきですよ、人間いきなり妄想の世界には入らないです。そんな訳で、たぶん本書も当事者からの批判は多々あるものと予想されます。それ以前に「腐女子云々などと広めないでくれ!」と言いたい気もしますしね。前著の事もあるので、タイトルと帯だけでも当事者の反発を食らっているのではないでしょうか。

それでも、読み進めていくうちに納得できる部分もあります。最後に、自らを「腐女子」と呼んでしまう女性のオタクたちには客観性と冷静さがあり、それは「物語」の世界に逃避することで現実の自分を俯瞰できるからだといっています。現実の平凡な日常をキチンと生きるために「物語」を必要とするが、それは健全な現実逃避だ、という結論に至っています。途中は「?」な部分もありましたが、この結論には私も同感します。

ただね、こういう結論に達するのなら、「自分忘れ」という切り捨てた様な言い回しを前面に出さないで欲しかったです。後半になるにしたがって、現在の20代30代の女性たちが置かれている厳しい現実に触れ、格差社会の中で「嗜好」を重視したライフスタイルに向う女性たちの心情を、「生きる知恵」として肯定的に語っているのですから。

それはさて置き(置いていいのか?)、個人的に買いだと思ったのは、柏枝真郷さんへのインタビューが載っていた事です! 同じ中央公論新社のノベルズで『PARTNER』シリーズ(BLじゃないですが)を書いてるからなんでしょうが、それは嬉しかったです。

前著については、「AliNote」というサイトの「やおいにつて」に「オタク女子研究」への反応集、というのがあります。参考までに。
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これがワタシたちの小説ベストセレクション70
2006-07-13 Thu 01:16
(株)マックガーデン  2006年7月14日発行

二宮悦巳さんの表紙イラストが目に留まって、思わず手にしたのがこの
「これがワタシたちの小説ベストセレクション70」です。発売は6月30日だったようです。

小説を読むとき、その何に心惹かれるのかと言えば、ストーリーや登場人物の個性もさることながら、その中で語られる人間関係の在り方というのが、大きなウエートを占めていると思います。この本では特に、オトコたちが活躍する作品に焦点をあて、時にはライバルという形で、または主従という形で、あるいは何者にもかえがたい友情という形で、その熱い関係性を描いた小説を紹介しています。

本好きの編集者とライター(全て女性)がセレクトした選りすぐりの70タイトルに、それぞれ描き下ろしイラストコメントも付いた、眺めても楽しめる1冊です。イラストは、表紙同様、BL小説でもお馴染みの豪華メンバーが揃っています。しかし、紹介されている作品は全て、BLレーベル以外から出版されている一般小説です。

ちなみに、70タイトルの中で私も読んだことがある作品は、

学生時代に読んだのは、映画を観ての、つかこうへい『蒲田行進曲』と宮本輝『泥の河』。教科書にも載っていたのが夏目漱石『こころ』、中島敦『山月記』、太宰治『走れメロス』。あとは森鴎外の『舞姫』でした。

BL小説を知った後では、最初に読んだのが、かつてJUNE読者のバイブル的作品といわれた、森茉莉『恋人たちの森』でした。森茉莉は森鴎外の娘ですが、70タイトル中親子で登場はこのお二人だけでしょう。それから映画にもなった江國香織の『きらきらひかる』。比留間久夫『YES・YES・YES』、三島由紀夫『仮面の告白』。

そして一番最近読んだのがアニー・プルーの『ブロークバック・マウンテン』で、映画を観た帰りに書店で文庫本を購入しました。イニスが亡きジャックの実家を訪れる場面は同じなのに、同じ台詞を言われいるのに、映画と違ってジャックの両親(特に母)に拒絶されいるのが辛かったです。

未読の作品で読んでみたいモノも幾つかありました。BLレーベルの中に読みたい本が見つからない時、ちょっと違う視点の作品を読んでみたいと思った時、はたまた、BLと一般小説の違いって何だろう? と考えた時などに、この本を参考にしてみるのもいいのかなぁ、と思いました。

表紙に惹かれて手にしたといえば、よしながふみさんがイラストを描いていた、この本の前シリーズ『これがワタシたちのDVDベストセレクション70』もそうだったのですが、こちらは見ただけで未購入、読んでいません。そのかわり(?)買ってしまったのが、同じくよしながさんの表紙だった、夏目房之介さんの「マンガは今どうなっておるのか?」でした。どちらの本も、題名より著者より、まず絵に反応して手にとってました。

そういえば、夏目房之介さんは最近「よしながさんと対談!」されたようです。それを読むのも楽しみです。
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ボーイズラブ小説の書き方
2006-02-20 Mon 13:43
花丸編集部・編 2004/8/25 発行 白泉社

表題通りの内容です。プロのボーイズラブ小説書きを目指す人、特にその足掛かりとして小説花丸へ投稿する人に向けたハウツー本です。編集者として、多くの読者に受け入れられる作品を書くためのノウハウや投稿への心構えなどが書かれています。

しかしながら、
本書に書いてあることにすべて従うことはありません。
本書に書いてあるのは、あくまでも最大公約数だからです。
ハウツーのすべてに添っていれば、必ずおもしろくなるというわけではい、
逆にハウツーに反しても、おもしろいものはおもしろい・・・。
名作というのは、しばしば掟破りで登場するものなのです。
という当然といえば至極当然のことが、前書きに書かれています。では「すべてに従うことはありません」というノウハウを、誰に向かって書いているのでしょうか。奇しくも本書発行の2004年、このジャンルの先達といっていい「小説JUNE」が実質休刊となりました。そこに、ボーイズラブの裾野の広がりと、このジャンルの時代の変遷を感じました。
そもそもボーイズラブ小説とは何なのか、というところで、「やおい」「JUNE」と「ボーイズラブ」を同じものと言っていいのか、違うのならそれはどういうところなのか、というのは難しい問題であるとしています。そこで本書では独自に、次の3点をボーイズラブ小説と定義しています。
1. ボーイズラブ小説とは、男性同士の恋愛小説である。
2. 書き手も読み手のほとんど女性という点で、ゲイノベルとは一線を画す。
3. 形式としては少女小説、精神としては少女マンガの流れを汲んでいる。
ただし、これを統一的な定義として広めるつもりもないとも書いています。これはあくまで本書、つまりは「小説花丸」編集部での基準なのです。

次にいよいよボーイズラブ小説を書く為のノウハウが語られるのかと思うと、初級編は基本的な小説の書き方です。小説以前に文章の書き方や構成、原稿の書き方など、ボーイズラブ小説に限らない、一般的に参考になる基本も多く書かれています。実に本書の3分の1以上、半分に近いページ数がこの初級編に費やされています。つまり編集部が投稿者に最も訴えたい事はこれなんですね。こういう事まで説明しなくてはならない若い世代の人や、あまり文章を書き込んでいない人が、いきなり投稿してみようと思うほど、ボーイズラブ小説を書く事への敷居が低くなったという事でもあるのでしょうね。

そして本書が言う「ボーイズラブ小説で最も大切なこと」は
書き手であるあなたの萌えを、読み手へきちんと伝えること
なのだそうです。「萌え」とは具体的に何なのかが、また難しいような気もします。その対象へのトキメキとか熱き想いでしょうか。確かに作者の想いが伝わらない様な作品では面白くありません。それを伝える為の具体的ノウハウが上級編という感じになります。

前書きで最初に「ボーイズラブ」と「JUNE」は同じではない、と宣言されています。ですから比べても意味がないのでしょうが、中島梓さんの「小説道場」に色々と考えさせられた私にとっては、同じジャンルの流れを汲む作品(と私は思っていた)について書きながら、その対極にあるような内容に思えました。私が思うJUNE小説とボーイズラブ小説はやっぱり別物なんだなぁ、と認識させられる本でした。

商業出版である以上、売れる事は重要な要素ではあります。でも、このジャンルの小説に求められるのはそれだけなのだろうか。単に「萌」だけを上手に伝えられれは良いのだろうか。「小説JUNE」が休刊してしまった今、胸の内を揺さぶられるような作品にはもう出会えなくなるかも、と少し寂しくなりました。

ただ、本書の中で言われている様に、今の時代「恋愛至上主義というのはボーイズラブだからこそ説得力をもつ」というのは、このジャンルがここまで広がった大きな理由のひとつだと、私も思います。世の中全体がもっとシンプルだった時代ならともかく、混沌とした現代に真正面から男女間の恋愛至上主義をやっても嘘臭くなる。かつては少女マンガが担ったそのラブファンタジーを今ボーイズラブ引継いでいる、というもの頷けます。

そして、あとがきにまた「本書に書いてあることにすべて従うことはありません」ということが念押しの様に書かれています。
ここに書かれていることに反しているけれど、それを超えるほどの限りない魅力と萌えに溢れている・・・・
編集部が求めているのは、むしろそうした作品なのです。
それが編集者の本当の本音なのでしょう。さらに、投稿するからには直木賞を取るくらいの気概を持って欲しいとも書いています。私もそういう新人作家が出てきたら嬉しいです。でも「萌」だけは直木賞は無理の様な気がします(笑)

アキミさんの「ボーイズラブを読む!」へTBさせていただきます。
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「ぱふ」のBL特集
2006-02-15 Wed 23:28
先月発売された雑草社発行のまんが情報誌「ぱふ」2月号では、「乙女が萌える ボーイズ・ラブ2005」という特集が組まれていました。地元市立図書館で見つけて借りたのですが、バックナンバーを見てみたら「ぱふ」ってここ数年毎年2月号にボーイズ・ラブ特集を組んでいたんですね。今時の少女漫画はあまり読んでいないので、「ぱふ」にも注目した事がなくて、ちっとも知りませんでした。

それで今年の2月号ですが、その特集の中に結構長いこだか和麻さんへのインタビューが載っていました。私は小説の挿絵は拝見した事があっても漫画作品は読んだ事がないのですが、「KIZUNA」「腐った教師の方程式」などを描かれた方です。1989年に週刊少年チャンピオンでデビューされたそうですが、その当時アニパロのやおいは知っていても、オリジナルのJUNE系漫画の存在を知らなかったのだそうです。少年誌でデビューされ、プロになってからBL漫画に転向されたという、珍しい経歴をお持ちな訳です。

でも、少年誌に描いている時、酔った勢いの担当編集者にその作品を「ホモくせー」と評された事があるそうです。ご自分ではそんなつもりは全くなかったので、「何言ってるんだろうこの人」と思ったそうですが、自覚はなくてもBLを描く素養を潜在的にお持ちだったのですね。その後BL漫画の人気作家になられる訳ですが、こだか和麻さんがこのジャンルで描き始めた90年代の初め頃というのは、この系統の雑誌が次々に創刊されて、小説でも大手出版社がヤング向け文庫からBL専門のレーベルを独立させていった時期でした。ボーイズラブという名称が生れたのもその頃で、まさに黎明期から隆盛期を支えたベテラン作家さんのおひとりです。

商業誌は同人誌とは違うので、好きなものを好きなように描くのではなく、読者が何を求めているのかを常に念頭に置きつつ、その中から自分の描きたい物を探し出していくのだと、こだかさんは言っています。読者あってこそ世に出て行くのが商業出版の作品だという事なのでしょう。隆盛期を過ぎ次のステップに進みつつあるジャンルであるだけに、今後それを商業作品として手掛けていく作家さん達の厳しさも垣間見えるインタビューでした。

海外の"YAOI"事情にも触れられていて、こだかさんの作品をはじめ日本の作品が多く翻訳出版されているそうです。世界各国にもBL的なものを必要とする女性が多くいるんですね。海外ファンの反応をもっと知りたいところです。
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やおい幻論
2006-02-05 Sun 12:36
榊原史保美 著  夏目書房 1998年6月 初版

榊原さんは、1982年に小説JUNE創刊号掲載『蛍ケ池』でデビューした小説家。当時は姿保美を名乗っていました。84年小説JUNE7号から連載した『龍神沼綺譚』は初期の代表作で、JUNE史にも残る名作のひとつです。しかしその後、男性同性愛をモチーフとした作品を書き続けながらも、JUNEや他の「やおい」系レーベルからは距離を置いて作品を発表するようになりました。95年からペンネームも榊原史保美に改名しています。

「山なし・落ちなし・意味なし」が語源だという「やおい」という呼び名は、70年代終りに同人誌の中で使われ始めたようですが、しだいに商業誌も含めてこのジャンル全てに対する呼称となって行きました。やがてその人気に乗じて大手出版社も含め多くの専門のレーベルが生れました。そんなブームの中で、「やおい」という蔑称に甘んじ、このジャンルの小説への意味の検証もないまま、ブームに流されるように作品を生み出す編集者や作家、それを受ける入れる読者たちに対し、異議申し立てという問題提起をしているのがこの「やおい幻論」です。 

そしてまた、蔑称に値する現象であるという事で、闇雲に「やおい」的嗜好を批判する人々に対しても、「やおい」的嗜好に向かうにはそれなりの理由があり、「おかしなモノ」として切り捨てるだけでは何も解決しないというような反論をしています。榊原さんが、大変慎重に言葉を選びならがら書いている緊張感が伝わって来るのですが、「蜜の厨房」さんの「正しいボーイズラブ講座特別番外編」でも紹介されてる「やおい論争」なるものを経ているのが、その原因かもしれません。

それなりの理由として、榊原さんはトランスセクシャルを挙げていますが、これが全ての作家や読者にあてはまる訳ではないと思います。私自身も全く別の理由から「やおい」的嗜好の作品に惹かれましたし、こればかりは個々に千差万別の理由がある事柄だろうと思います。そのあたりはちょっと強引な結論付けだと感じますが、全体としては真摯に誠実に問題に向き合った「やおい論」として一読の価値があるものだと思います。

<参考サイト紹介>

松岡正剛さんの書評サイト「千夜千冊」「やおい幻論」
「快楽読書倶楽部」というサイト内で紹介されている「私的榊原姿保美作品目録」
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