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BREATHLESS -ブレスレス-
2006-11-26 Sun 16:39
たけうちりうと 著 / イラスト ビリー高橋
講談社X文庫ホワイトハート 1995年7月発行

『INTENSITY』から1年、司くんと出会った花屋の了くんの視点で書かれた物語です。この作品も書店では見つからなくて、図書館で借りて読みました。未だに古書店でも出会っていませんので、感想を書くために今再び図書館から借出中です。
リツさん、あれから1年以上経つよ。
あなたの生命をもらって、ここに一人残された僕は・・・。
『花々』で働く了は、注文の花を届けに行った先で、勝気なカメラマンと出会う。
心の奥に癒しきれない痛みを抱えながらも、優しいまなざしをなくさない彼を見ているうち、了の心にある感情が芽生え・・・。
『INTENSITY』の司、その後の物語!
この作品を読んでいて感じたのは、このカバーの紹介文にもあるように、『INTENSITY』の続編ではなく、あくまでもその後の司の物語なんだなぁ、ということでした。

たけうちさんは、1994年7月発行の『INTENSITY』でデビューした後、WHから『風の祭』(1994年11月発行) 、『海をわたるトンボ』(1995年3月発行)を出していて、『BREATHLESS』は4冊目になります。前2冊同様、イラストはビリー高橋さんで、表紙は花に囲まれた司のアップです。ビリー高橋さんのイラストも漫画も好きなんですが、この司は、私が『INTENSITY』から受けたイメージとは違う感じがして、ちょっと馴染めませんでした。何か思ったより線が細過ぎる感じがして。
『INTENSITY』は登場人物のイラストがなかったので、私の司くん像は、優しげな風貌の中にも、もっと凛とした気の強さがあるイメージだったんです。でも『BREATHLESS』の司くんは、きっと了くんビジョンだから、どこか行暮れて頼りなそうな感じなのでしょうね。だからやっぱり『INTENSITY』の続編ではないんです。

高校を卒業して写真の専門学校で勉強している司は、『INTENSITY』にも登場したリツの友人ミノさんの紹介で、カメラマンとしてライブハウスにやってきて、そこへ花を届けに来た了と知り合いました。ふたりは友情を育むように接近していくように見えるけれど、了が司という人間にいだく興味というのは、最初からもう一歩踏み込んだもののように感じられます。読み手の私が最初から意識してしまっているからかもしれませんが、この作品はBL小説として書かれているのだなぁ、と思いました。

『INTENSITY』はそうではなくて、普通の青春小説としても読める印象があったので、その点でも、やっぱり続編ではないように感じたんです。それが良いとか悪いとかの問題ではなくて、BLとそれ以外の恋愛小説・青春小説の違いって何だろう、と考えてしまいました。

明確な答えは出ないんですが、ひとつ思ったのは、主人公の孤独をどう扱うのか、という事です。突き詰めれば孤独な存在である人間を、孤独なまま放置しないで何らかの具体的救済策を講じているのがBLのような気がします。そういう意味ではJUNEとBLも別物です。
でもやっぱり、司が誰かと共にある幸せを再び感じてくれることを願わずにはいられませんが・・・。

『BREATHLESS』は、作品中に登場するCDのタイトルです。了が世話になっている花屋のお婆さんは、時々亡くなったご亭主を偲んでサックスのCDを聴いていました。そんなお婆さんも一緒に聴けるだろうと司が買ってきたのが、サックス奏者ケリー・Gのこのタイトルのアルバムでした。恋人を亡くしている司は、夫を偲んでサックスの音色に耳を傾ける老婦人に共感するところがあったのでしょうね。

家に偶然ケリー・GのCDがあったので、今それを聴きながらこれを書いています。以前ダンナが買ってきたものなんですが、『BREATHLESS』じゃなかったのがちょっと残念です。
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INTENSITY
2006-11-19 Sun 16:44
たけうちりうと 著 / イラスト いわもと葉月
講談社X文庫ホワイトハート 1994年7月発行

第1回ホワイトハート大賞を受賞した、たけうちさんのデビュー作です。
フジミを教え下さった方に、「是非読んでみて!」と薦められたのが、この作品でした。

その当時既に発行から数年経っていたので、書店では見つけることが出来ず、地元図書館で借りて読みました。フジミや、別の方のご紹介で読んでいた『終わりのないラブソング』とも全く違う雰囲気で、新鮮な感慨を誘われる作品でした。自分でも手元に置きたい本だと思いつつ、中々古書店でも出会わなかったのですが、つい最近やっと見つけました。

表紙にイラストを使わず、サングラスをかけた男性のアップの顔写真だけという、他のホワイトハート作品とは違うインパクトのある装丁です。文中のイラストも章ごとのカットだけで、登場人物を描いた絵は一枚もありません。それだけでも普通のBL作品文庫とはだいぶ違う雰囲気ですが、背表紙はパープルです。
誰にでも“忘れられない夏”はあるという。だとしたら、僕のは十六歳のあの夏だ。まばゆい川面、潮の匂いのよせる河口。
海鳴りとさざめきの中で、カメラをかまえる彼の横顔が、いまも鮮やかに心によみがえる。ティアーズ・フォー・フィアーズのメロディとともに…。
十六歳の司は、年上のカメラマン・律と出会う。彼に魅かれていく自分を、抑えきれなくなった司は…。
カバーに書かれている、冒頭の導入部分を引用した上の紹介文も、他作品と比べると随分と詩的な感じがします。これだけで何だかドキドキして、再びページをめくってみたくなります。
でもあらすじとしては簡潔過ぎるので、物語の内容をもう少し書いてみます。
デートの下見をするという友人に付合って湘南へやって来た高校生の司は、歩き疲れて偶然入ったカフェ「イルカの昼寝」でひとりの男と出会う。リツ(律)と呼ばれるその男が無性に気になった司は、ひとりで再びその店を訪れた。
カメラマンであるリツは、河川敷で鳥の撮影をする手伝いを司に頼んできた。ゲイであるという自覚を持つ司は、リツに惹かれていく自分の気持ちが何なのかわかっていた。時に意地を張って喧嘩ごしに接してしまう事もあったが、その思いは深まっていく。
リツと接し、しだいに写真にも興味を持つ司だったが、リツが本当に撮りたいモノは海外の危険地帯にあった。内戦の続くカンボジアに行くというリツに、司は同行を願い出るのだが・・・。
結論から言うと、司にとっては辛い結末が待っています。けれど、決して暗い物語ではありません。リツさんに惹かれていく司の初々しさは、新鮮で胸の高鳴りが伝ってくるような、青春という時間の輝きを持っています。自分の撮りたいモノを追い求め、カメラマンとしての仕事を優先して、今までの恋愛も結婚も上手く行かなかったリツもまた、途上の人です。そんなふたりの結び付きが、何ともいえない優しさと潔さを感じさせてくれます。

"INTENSITY"、リツさんがパスポートに挿んで持っていた、司のポートレートの裏に書かれていた文字。強さ、厳しさ、激しさを意味するその言葉は、残された司へのリツさんからの励ましのメッセージになったのかもしれません。リツさんにとっては、心残りはあったでしょうが、それほど不幸な人生の幕引きではなかったのかもしれません。

この物語を執筆中、カンボジアで選挙監視員としてボランティアをしていた日本人青年が亡くなるという事件があり、一時執筆を中断したという出来事が、あとがきに書かれていました。それから10年以上が過ぎ、世界の情勢はまたさらに大変な事になっています。イラクでの日本人人質事件とそれに伴う自己責任報道。たぶんその後だったら、この物語が書かれる事は有り得なかったでしょう。とても素敵な作品なので、復刊されるといいのにと思いますが、それを思うと何となく難しいような気もします。

巻末に、第1回ホワイトハート大賞の選評がありましたので、この作品に関する部分を抜粋して紹介します。
秋元康さんの選評から
"ゲイ"というテーマが古いと思うし、母親が、息子がゲイであることを認めるのが嘘っぽいが、思わず「うまい」とうならせたり、泣かせたり文章の巧さと、シャープなセンスが光るので、これを大賞に推した。

内館牧子さんの選評から
ゲイの息子を持った母親が、「母さんはもう乗り越えたよ」と言うが、このセリフがよかった。・・・これは母親の人間像が描けていたから出てきたセリフにほかならない。・・・作者の年齢を考えたとき、このレベルの作品では満足できない。
選評者の顔ぶれといい、書かれている内容といい、この作品をBL小説ではなく、一般的な青春小説として評しているのがわかりますね。ちなみに、この時の最終候補作には仙道はるかさんの『ヴァルハラ』(1996年3月発行ホワイトハート)も入っていました。

息子がゲイであることを受け入れている司の母親、確かに物分かりが良過ぎるような気もしますが、嘘っぽいとは思いません。もし、自分の息子がそうであるなら、親として一番に望むのは、息子本人が自分らしく幸せに生きて行ってくれることです。その為に認められない親もいるのでしょうが、たけうちさんも親として自分はどうなのか考えた結果、この母親像が生まれたのだと思います。
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