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牛泥棒
2007-07-19 Thu 03:46
木原音瀬 著 イラスト 依田沙江美
蒼竜社ホリーノベルズ2007年7月発行

昨年10月の『リベット』以来、やっと木原さんの作品を読む事が出来ました。これまで読んだ木原作品とは随分と趣の違う、明治時代の主従モノです。
地方の造り酒屋の長男である佐竹亮一郎は、上京して帝国大学で植物学を修め、家業は継がずに大学で助手をしていた。東京の住まいには、女中の他に乳母の息子である徳馬を実家から連れて来ていた。亮一郎より少し年長の徳馬は、ある事情から口がきけなかったが、幼い時から亮一郎の側にいて、使用人ではあっても共に学校へも通ったのでそれなりの学問も身につけていた。自分の生活習慣や性格を理解し、大学の仕事の手伝いも出来る有能な使用人。しかし、徳馬を伴って上京した本当の理由は別にあった。亮一郎は密かに徳馬に想いを寄せおり、常に側に置いておきたかったのだ。

そんな云うにいわれぬ想いを抱きつつ東京で暮らす亮一郎に、実家の火災による家族の死という思わぬ災難が襲いかかった。そして、実家で働いていた母をこの火災で亡くした徳馬から、東京には戻れないと暇を願い出られ、亮一郎は想いを隠せなくなった。そんな折、地元の祭事に使う牛を徳馬が盗んだという疑いをかけられるのだが、それには徳馬だけが知る深い事情があった・・・。
それにしてもこのタイトル、そのものズバリである意味わかりやすいですが、何ともBLにあるまじきとも云えるタイトルですので、返ってどんなお話なんだろうと興味を引きました。そして明治モノに加えて、冒頭からいきなり異界の者が登場したりする百鬼夜行抄的な雰囲気も、これまで読んだ木原作品と全く違っていて、それがかえって個人的には色んな先入観を取払って物語りに入り込めて助かりました。木原さんの作品は、やっぱり小説として面白いです。おかげで『リベット』ショックが吹っ切れたようで、積読木原作品も順次読めそうです。

木原さんがよく作品の中に描く、相手を追い詰める様な人間のエゴイスッテクな部分。この作品では、亮一郎の我が儘な性格に多少は現されていますが、人間たちよりもアヤカシとなったものの情念として描かれている方が印象にのこるので、全体的にはわりと軽めに感じます。

ひたすら亮一郎に従っているような徳馬が、時には嫉妬心から彼を疑ってしまう事もありますが、亮一郎は徳馬を信じています。それを知って自分の猜疑心を省みる事が出来る徳馬も、基本的には真直ぐな性格です。色々災難は降りかかりますが、ハッピーエンドなお話です。

でも、亮一郎の気難しさや徳馬への執着、それに対する徳馬の自己犠牲的な献身というのは、明治モノだからこそ有り得る主従関係と妖魔の存在する世界を通して見るとすんなり受け入れられるけれど、よく考えたら結構怖いところもあるのかもしれません。
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B.L.T
2006-10-09 Mon 15:37
木原音瀬 著/イラスト 稲荷家房之介(ビブロス ビーボーイノベルズ 2002年2月発行)
「ライン」(同人誌より再録) 「B.L.T」(書下ろし) を所収

現在進行形のシリーズ物以外で数年前に発行されたBL本って、普通の書店で見つける事はほぼ不可能に近いですし、ネットでも絶版品切れで手に入らない本が多いです。そんな時は古書店を頼るしたかないんですが、木原さんの本は古書店でも中々見つかりません。そんな中、幸運にもめぐり会ったのがこの一冊です。
「ライン」
大学生の北澤眞人は、アルバイトの面接に行った本屋で思いがけない人物と再会した。5年前、まだ中学生だった北澤に、通学中の電車内で痴漢行為を仕掛けた男、大宮。当時サラリーマンだった大宮が、今目の前に居る書店長だった。平然と面接を行う大宮に心を乱され、北澤の脳裏に決して忘れることが出来ない5年前の出来事が蘇った。
北澤は、痴漢行為を責めて大宮を脅し、食事を奢らせ欲しいものを買わせ、部屋にも入り浸って振り回した。ゲイであるの大宮は、そんな北澤に翻弄させられながらも、本気で愛しさを募らせていた。夏休み、両親の不仲で宮崎の祖母の元に行けなくなった北澤は、大宮に連れて行って欲しいと頼み、仕事さえ放棄させてしまった。二人の心は通じたかに思えたが、北澤はそのまま宮崎に留まり、その後大宮に連絡を取る事はなかった・・・。

「B.L.T」
一度は北澤のバイトを断ろうとした大宮だったが、結局自分からキッパリ断切る事ができない想いを抱えたまま、北澤をバイトとして迎え入れる事になった。平静を装って上司の顔をしていたが、しだいに今でも北澤に惹かれている気持ちを抑えきれなくなって行く大宮。二人はやがてその想いを確認し合う。しかし、今の大宮には同棲している恋人がいた。我儘でプライドが高い男、千博。自分は平気で浮気をしてきたくせに、大宮が他の男に心を奪われたと知ると、自殺を図ってまで繋ぎとめようとする。結局大宮は北澤に別れを告げるのだが・・・。
変わったタイトルだなぁ、と思ったのですが、「B.L.T」というのはベーコン・レタス・トマトのサンドイッチのことでした。大宮と千博の共通の知人である高野のカフェのメニューにもあり、大宮が唯一作れる料理(?)でもあります。千博の元彼でもある高野は、物語のキーパソンでもあります。

『セカンド・セレナーデ』の「水のナイフ」に登場する高校生の明智君などもそうでしたが、ひとのいい大人の男を翻弄する少年の、揺れ動く内面の脆さと残酷さがひしひしと伝わって来ます。「いい加減にせい。もちっと大人になれよ!」と思いつつ愛しくて切ないですね。だから、ほだされて振り回される大宮も情けないと思いつつ、その気持ちわからなくもないです。

千博への想いはすっかり冷めて、その執拗さに辟易して殺意さえ抱いても、結局すぐには別れる事も出来ない大宮。更に情けな度が増すわけですが、千博の自殺未遂の描き方が中々緊迫していて、大宮の中の残酷さや、それを引出してしまう千博の凄まじさが、思うに任せない人間感情のもつれを克明に表現していて、BLであることを忘れそうでした。

ラスト、物語を前向きな方向に導くのは、北澤の決断でした。でも、この二人が目出度く結ばれる日が来るのかどうか、それは明確ではありません。ただ、お子様だった北澤が、すっかり大人になって強くなったなぁ、とそれがとても清々しく感じられました。

木原さんの作品には、もはやBLではないのでは(良い意味で)、という感想を目にするものも多いです。私もそう思うんですが、では一般小説かと言われると、それも少し違う気がして、やっぱりBLといえばBLなんだろうなぁ、たぶん、と思うのです。

何処かのblogの感想で、「BLというジャンルではなくて、木原音瀬というジャンルを書いている」と書いていた方がいらしたんですが、それいいなぁ、とっても納得。私もそれに一票(?)です!
しっかりブックマークしないで読んでいたので、どなたのblogかわからなくなってしまったんですが、後でまた探してみます。

P.S.
上記のblogは「月と凌霄花」さんでした。
正確には「木原さんはBLを書いてるんじゃなくて、ただ木原さんというジャンルを貫く方なのだなと思いました。」と書いておられました。ほんとうにそう思います。

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リベット
2006-10-07 Sat 00:05
木原音瀬 著/イラスト 藤田貴美(蒼竜社 HOLLY NOVELS 2006年9月発行)
「リベット」(オークラ出版「小説アイス」2001年7・9月号初出)
「リベット2」(書下ろし) 以上2作品所収

木原さんの新作が読めると楽しみにしていたので、内容などは何も吟味しないで作家買いしました。読み終えた後、ずっしりと胸に迫って来るものがありました。『箱』『檻』とはまた少し別の意味で、心に残る作品だったと思います。

物語から受けた感慨とは別に、この重いテーマをBLという枠の中で扱い、このジャンルの限界へ挑戦してるんじゃなかろうか、という木原さんの姿勢に衝撃を受けたのかもしれません。
高校教師の初芝は、誰にも言えない知られたくない問題を抱えて暮らしていた。それは、何も知らずに支えてくれる恋人の由紀に対しても、想っているからこそ打ち明けるのを恐れてしまう問題だった。ひとりでそれと立ち向かいながら、慎重に日々を過ごす初芝の気持ちを揺るがしたのは、やたらと慕ってくる職場の後輩乾の存在だった。学生時代のボランティアの経験から、初芝が抱える問題に気付いた乾は、協力を申し出る。初芝はそれを断り乾と距離を置こうとするが、その熱心さについ甘えてしまう・・・。
初芝の抱える問題をめぐって、人の心の中にあるエゴと甘え、情と残酷さを浮き彫りにしながら、それでも誰かを必要とする切なさを描いています。人間の弱さと強さ、それ故の愛しさが伝わってくる作品です。

初芝の抱えている問題とは、HIVの感染者であるという事です。それは学生時代、突然告白して来た友人に無理やり体を奪われた事が原因でした。思い余って強姦してしまう、というのはJUNE以来何度も描かれてきた展開です。そういう、時として乱暴な性愛込みの恋愛を描くBLというジャンルで、作者も読者も暗黙の了解の様に直視して来なかったHIV感染の問題。

これまで、その危険性に言及したお話はあっても、主人公がこういう形で感染した当事者というのは無かったのでは。そもそもラブファンタジーでもあるBLで、主人公に当事者を置くのはタブーであるとも云えます。あえてその難しいテーマに挑んだのは、果たして反則なのか可能性の追求なのか、はたまた問題提起なのか。読み終えてから数日、未だに自分の中で結論が出ません。

真実を告げたら恋人は離れて行き、死の恐怖に怯えながらも、無理にでもひとりで生きる覚悟をしようとする初芝。そんな彼への片想いから、時に色々と気遣いをして援助し、迷惑になると思えば距離を置く乾。やがて初芝は、乾の真直ぐな想いに触れて、自分の弱さを見せ心を開いていきます。はっきりと恋人同士になる訳ではありませんが、二人の距離がかなり縮まった所で、本編(「リベット2」まで)は終わっています。

由紀の優しさを手放すのが怖くて中々真実を告げられなかった初芝も、それを一度は受け入れようとしながら結局は去っていった由紀も、責める気にはなれません。学生時代に辛くてボランティアから逃げた乾の後ろめたさもよくわかります。だからこそ、乾が何の恐れもなく真直ぐに初芝に寄り添おうとするところに、それが純粋な愛故だとしても、少し引っかかりを感じます。

そしてカバーを外すと、そこには「もう一山も二山もあった3年後の二人」のお話があります。そこへ至る道程は勿論平坦ではなかったでしょうが、それなりのハッピーエンドを望む読者へのサービスなのでしょう。確かにホッとするけれど、BLレーベルでこのテーマを描いた木原さんの意欲作と感動しつつ、BLという枠の制約も感じました。
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箱の中・檻の外
2006-07-11 Tue 20:02
木原音瀬 著  イラスト 草間さかえ
蒼竜社 HOLLY NOVELS
『箱の中』2006年3月25日発行( オークラ出版「小説アイス」2004年1月号初出 )
『檻の外』2006年5月25日発行( オークラ出版「小説アイス」2004年5月号初出 )
初出誌は著者オフィシャルサイトで確認しました。

『箱の中』が発売になった時、書店平積みのBLノベルズの中で、草間さんの絵によるこの作品の表紙だけが、何か朴訥とした異質な雰囲気を醸し出していて、妙に心惹かれました。
うーん、でも、刑務所モノというのが引っかかって、手には取ってみたものの購入には至りませんでした。その後続編が出て、「二人とも無事刑期を終えたんだ、よかったね」という所まではチェックしていたんですが、気に掛かりつつ読まないリストに入れていました。

ところが続編が出たあたりから、複数の書評サイトさんで絶賛されいるのを目にするようになりました。2006年折返し地点の現段階で、今年のベスト5上位に入る事必至という方、充実した読後感を味わえた方が多くいらしたようです。特に、いつもお伺いしてる「ゲイ&腐男子のBL読書ブログ」さんの感想を読んで、是非この作品を読んでみたいと思いました。という事で、人様の感想に押されて、これはやっぱり読んでみたいと、2冊まとめて買ってきました。
『箱の中』・・・ 市役所に勤務していた堂野祟文は、痴漢と間違われて逮捕され、冤罪を訴え最高裁まで争ったため、実刑判決を受けてしまう。服役中、雑居房での受刑者たちとの生活に馴染めずにいる中、「自分も冤罪だ」と言って近づいて来た同室者に心を許すが、騙されて疑心暗鬼に陥ってしまう。そんな堂野に近づいて来たのは、無口で孤立している様に見えた殺人犯の喜多川圭だった。見返りを求めず無言で傷ついた自分を慰めてくれた喜多川に、堂野はその孤独を理解し寄り添いたいという思いを抱くようになる。喜多川はそんな堂野にべったりと懐くようになるが、それは友情を超えた執着となっていった。堂野はその想いを受止め切れぬまま、連絡先も告げずに出所した。時は流れ喜多川も出所する日がやって来たが、社会復帰して結婚し、やがて父親になる事になっていた堂野には、友情以上の気持ちを持つであろう彼を迎えに行く勇気がなかった。
『檻の外』・・・ 別れから6年経ったある日、堂野は、自宅近くの公園で喜多川と再会した。「やっと、やっと見つけた」「話したいことが沢山あるんだ」と言い募る喜多川に、既に妻子持ちとなっていた堂野は、躊躇しつつも住所を告げる。程なく近所に移り住んできた喜多川を、堂野は友人としてして家に招き入れるようになるが、思わぬ悲劇が堂野の娘に襲いかかり、家庭は崩壊していく・・・。
良かったです。BL業界、こういう作品、作家さんが出て来るって事は、まだまだ捨てたもんじゃありません。有り得ないかもしれないけれど、人が文学の中に追い求める純愛のカタチ、それを地道な生活の中に描き、30年近い時の流れの経て、二人が添い遂げた生き様を肯定している物語です。色々と辛い出来事も起こりますが、最終的に二人は幸せだったと思える、心温まる読後感を得られる作品でした。

『箱の中』は表題作の他、出所後に生活の全てを賭けて堂野を探す喜多川を探偵の目から描いた『脆弱な詐欺師』『それから、のちの・・・』が、『檻の外』には、二人暮らしを描いた『雨の日』『なつやすみ』が所収されています。特に物語の締めくくりとなる『なつやすみ』は泣けました。BL的シーンは全部『雨の日』に任せて、最後は二人の穏やかで揺るぎない愛のカタチを物語っていました。

人の孤独が何処から来るのか、それを埋めるために何を求めるのか。恐れとプライドから孤立する痛々しいさと、他者を受け入れていく勇気と思いやり。BL作品でも重要な要素となるテーマですが、この作品ではそういう思いが、せつなくヒシヒシと伝わって来ました。小説として読ませる作品です。
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