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再読・そして春風にささやいて
2007-07-22 Sun 18:54
ごとう しのぶ 著 イラスト おおや和美
角川ルビー文庫 1992年4月発行 (2007年5月 29刷)

1992年12月の角川ルビー文庫創刊以前分はスニーカー文庫より発行。
小説JUNE1987年2月号掲載の表題作の他「若きギイくんへの悩み」(小説JUNE87年4月号掲載)、「June Pride」(小説JUNE87年6月号掲載)、「それらすべて愛しき日々」(小説JUNE88年6月号掲載)、「BROWN」(89年12月同人誌掲載)を所収。

去年書いたように小説JUNE10号(1984年12月)に「季節はずれのカイダン」(ルビー文庫「FAREWELL」(1993年)に改訂版所収)が掲載されてから20年以上続いているタクミくんシリーズの文庫版第1巻です。私が持っていたのは、古書店で買ったスニーカー版なんですが、この夏、角川文庫夏の100冊として限定カバーで発売になったので、ついまた買ってしまいました。
人里離れた奥地にある全寮制男子校私立祠堂学院の生徒である葉山託生(タクミ)は、高校2年の新学期を迎え、クラスメイトでもあるギイこと崎義一と寮で同室となった。ギイいわく“人間接触嫌悪症”という通り対人関係が苦手で自分の殻に閉じ籠っているタクミとは反対に、学校中の人気者であるギイは人望を集める人柄で級長も務めていた。

そんなギイとタクミが接近する事を快く思わない高林泉とその取巻きは、何かとタクミに突っかかって来た。その挙句、タクミとギイは取巻きたちに今は使われていない音楽堂に閉じ込められてしまう。人との接触を避けたいタクミだが、この非常事態にギイと二人で脱出するために協力し合わなければならない。おまけにギイから思わぬ告白をされ、動揺するタクミだったが・・・。
この表題作ではキス止まりですが、親兄弟からも愛された実感がなかったタクミくんが、半信半疑ながらギイの想いを受け入れる事で、他者との関係への一歩を踏み出すお話です。このジャンルに「ボーイズラブ」という名前が付く以前の作品ですが、JUNE誌に掲載されながら、古典的JUNE作品とは一線を隔す、というか「ボーイズラブ」への分岐点となった代表的な作品ではなかろうか、と個人的には思っています。

最近の大人が主人公のBLを読んだ後だと、何とも面映いような昔の乙女チック少女漫画を彷彿とさせるような気恥ずかしささえ感じますが、携帯が無かった時代の高校生活や恋の初めの緊張感が懐かしくもあります。

「June Pride」で主人公二人は一応めでたく結ばれ、その事がきっかけになって、タクミくんを“人間接触嫌悪症”に追い込んでいた亡き兄への思いも吹っ切れていきます。ギイはタクミくんにとって、閉ざされていた心の扉をこじ開けてくれた救世主でもありました。他者への想いが、破滅に向かう執着ではなくて、希望や成長につながる深い情愛として描かれることは、人間関係、特に恋愛関係において、時に理想的過ぎてファンタジーの領域なのかもしれません。でも、あえてそれを描くのが「ボーイズラブ」なのだと思っているので、このタクミくんシリーズ1巻はBLの原点をきっちり押さえた作品ということになります。そんな所が、古典的JUNE作品との違いかな、と思っています。

角川タクミくんシリーズHPでも紹介されますが、珍しく画像を置いてみました。
下の左がスニーカー文庫以来のカバーで、右がこの夏の限定カバーです。15年経っていると、おおや和美さんの絵もだいぶ変わってますね。二人とも可愛らしくなってる感じです。特にギイ、若返ってます。

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しかし角川文庫夏の100冊、何故にルビー文庫からもチョイスしてるの? 映画化されるというのもビックリでしたが、商売の為とはいえBLを何処へ導いて行く気なのでしょうか角川書店・・・。ルビー文庫にも「角川文庫発刊に際して」が載ってますが、草葉の陰の角川源義さんはどう思っておられるでしょうね。まあ、すっかり乗せられて限定カバー本まで買ってる奴が何を言っても始まりませんが(^^;)
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暁を待つまで(タクミくんシリーズ)
2006-10-01 Sun 17:42
ごとう しのぶ 著  イラスト おおや和美
角川書店 2006年8月発行

1992年4月に角川スニーカー文庫から『そして春風にささやいて』が発行されてから足掛け15年、小説JUNEに初登場してからだと20年以上続いているシリーズの最新作です。いつものルビー文庫ではなくて、B5版の単行本で1300円と少々お高いのが難点でしたので、8月の発売に気付かず書店では品切れになっていた時点で「読まなくていいかな」とあきらめました。ところがさすが人気シリーズ、ひと月で再版かかって書店に並んでいるじゃありませんか。おおや和美さんの表紙絵の誘惑に勝てなくて、やっぱり買ってしまいました。

20年前、主人公のタクミくんとギイくんは高校2年生になったばかり、という設定で始まったこのシリーズ、物語は行きつ戻りつしながら、未だに高校3年生までしか進んでいません。近頃の学園物では、ジャンプの漫画だからジャンルは違いますが、連載7年で物語時間が1年経っていない『テニスの王子様』も凄いなと思ってました。しかし「タクミくんシリーズ」の時間の流れはさらにゆるやかです。しかも今回のお話の舞台は1年の3学期で、時間が進まないどころか逆行しております。

ギイが世界的に有名な財閥の御曹司というこの物語の設定からすると、高校卒業後の二人の関係というのはあきらかに前途多難です。にもかかわらず、全寮制の男子校という外界からの影響の少ない環境の中で、先がおぼろげにしか見えない程ゆっくりと静かに流れる時間は、穏やかに二人を見守っているかの様です。だからこそ、読者も将来の問題をしばし棚上げにして、とりあえずは安心して物語に触れ、ほのぼのと優しい気持ちになれるのでしょうね。永遠のモラトリアムとも云えるタクミくんワールドは、もはや桃源郷のようなものかもしれません。

1年生バージョンの表題作では、タクミくんはまだ片倉くんと同室で、ギイともまだ只のクラスメイトという関係です。そして、ギイ命名「人間接触嫌悪症」をバリバリ発揮して、周りとの関係がギクシャクしているタクミくんに対し、彼を意識するギイは密かに色々気を使うわけですが、タクミくんからは何のプラスのリアクションも望めません・・・。ギイくんのちょっと切ない片思いのお話です。迷惑がられるのを心配して、風邪で寝ているタクミくんのお見舞いさえも躊躇するギイくん、何と初々しいんでしょう。

全般を通してエロ度はかなり低めのこのシリーズですが、今回はキスどころか手を握ることさえありません。エロ度0%です。そういう意味では、タクミくんシリーズというのは、読者がBLに求めるモノがエロだけはない事を証明している様な作品とも言えます。

併載の「まい・ふぁにぃ・ばれんたいん」、こちらは表題作にもバレンタインがらみで出てくる三洲くんと真行寺くんの1年後のお話です。このちょっぴり噛合わないカップルもわりと好きですが、肝心のタクミくんとギイくんのお話をもっと読ませて欲しかったとも思います。

P.S.
web KADOKAWA の『暁を待つまで』コーナーで壁紙ダウンロードが出来るようです。
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そして春風にささやいて(タクミくんシリーズ)
2006-02-25 Sat 02:00
ごとう しのぶ 著  イラスト おおや和美
角川スニーカー文庫 1992年4月発行

1992年12月の角川ルビー文庫創刊により、増刷分と継続中のシリーズはそちらから刊行中。小説JUNE10号(1984年12月)に「季節はずれのカイダン」(ルビー文庫「FAREWELL」(1993年)に改訂版所収)が掲載されてから20年以上続いているシリーズの文庫版第1巻。表題作の他「若きギイくんへの悩み」(小説JUNE24号1987年4月号掲載)、「June Pride」(小説JUNE25号1987年6月号掲載)、「それらすべて愛しき日々」(小説JUNE31号1988年6月号掲載)、「BROWN」を所収。

秋月こおさんの「富士見二丁目交響楽団シリーズ 」も長い事続いていると思いますが、「タクミくんシリーズ」の小説JUNE初掲載はそれより更に8年も前で、フジミほどコンスタントに続編が発表されてはいませんが、おそらくこのジャンルでの最長寿シリーズだろうと思います。しかも「そして春風にささやいて」で高校2年生だったタクミくん達は、未だに高校生です。

物語の舞台は、人里離れた奥地にある私立祠堂学院という全寮制男子高校です。主人公の葉山託生は、訳あって実家から離れ、名門良家の子弟も学ぶこの学校に在学していました。2年に進級し新たに寮で同室になったのは、学校中の人気者で財閥の御曹司でもある有名人、ギイこと崎義一でした。亡くなった兄から性的虐待を受け、それが原因で両親との仲も上手く行っていなかった託生は、自己防衛のために“人間接触嫌悪症”になっていました。そんな彼が、ギイに愛されることによって愛することも知り、しだいに周囲にも心を開いて、トラウマとなっていた過去の呪縛からも解放され、家族との関係も取り戻して行きます。

何しろ愛し合ってる二人は寮で同室ですから、もちろんそいうシーンもあります。でもこのシリーズはわりとソフトです。そして、最初の方こそ託生くんのけっこう重い過去の問題などJUNEっぽい要素もありますが、二人の仲が上手く行って安定してくると、明るいボーイズラブという雰囲気が強くなって行きます。

角川ルビー文庫創刊当時、タクミくんシリーズ以外でスニーカー文庫から移行した作品には、

栗本薫さんの「終わりのないラブソング」
原田千尋さんの「いつもキラキラしていた…」「北点抄」
三田菱子さんの「鼓ヶ淵」「Mこの世で一番最後の夜」
野村史子さんの「レザナンス・コネクション」「テイク・ラブ」

などがありました。どの作品もJUNEの懐かしい名作です。そして明るく癒し系の学園物であるタクミくんシリーズとは、随分と傾向の違う作品でもあると思います。

いま思うと、タクミくんシリーズは、当時としては異色の作品だったような気がします。少なくとも耽美小説という名は相応しくないです。まだボーイズラブという呼称が無かった時代に、その原点のひとつになった様な作品だったと思います。
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